翌朝。レイモンドは重い瞼を擦りながら、生徒会室の前に立った。
鞄の中には、昨晩寮で書き上げた『魔法回路の負荷分散に関する意見書』が入っている。セオドリックに休めと言われたからこそ、彼は逆に、自分が不可欠であることを証明しなければならなかった。
没落したアシュクロフトの名を背負う彼にとって、無能は死よりも恐ろしい。
だが、彼が学生証をドアの魔導認証にかざした瞬間。
ピーッという、聞いたこともない無機質なエラー音が廊下に響き渡った。
「……は?」
レイモンドは眉を寄せ、もう一度試す。エラー。三度目。やはりエラー。
認証ランプは、深紅に点灯したままだ。
「おい、冗談だろ……回路の故障か?」
苛立ちまぎれに呟いた、その時。
内側から、カチャリと、物理的な鍵が外される音がした。ゆっくりと開いた扉の向こう――神々しいまでの朝日を纏って立っていたのは、セオドリックだった。
「おはよう、レイ。いい朝だね」
「セオドリック……認証が壊れてるぞ。すぐに直せ」
言いながら、脇をすり抜けようとする。だが、先を塞がれた。
「いいや、故障じゃない。僕が学園長に頼んで、君の権限を一時停止したんだ」
「……あ?」
数秒、思考がフリーズした。
それでも無理やり押し入ると、そこは、自分の知る生徒会室ではなかった。
膨大な書類が積まれていた聖域には、一枚の紙も、一本のペンもない。どころか、デスク全体が青白い魔導障壁に包まれており、指一本触れられない。
