高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~


「彼は、規律を破ることを何より嫌う。たとえ納得できずとも、指示は守るはずだ。……その律義さを、逆手に取る」

「……鬼だ」
 誰かが小さく呟いたが、セオドリックはそれを最高の賛辞として受け流した。
 さらに彼は、懐から一通の封書を取り出した。ランカスター公爵家の紋章が刻印された、特権の行使書だ。

「これを使って、彼の学生証の魔導認証を、明日から七日間、生徒会室および研究棟から一時的に抹消する。これで物理的にも魔導的にも、この戦場に入ることすら叶わなくなる」

 徹底している。あまりに徹底しすぎて、もはや追放だ。

 セオドリックは戻ってくるレイモンドの足音を聞き取り、素早くメンバーに散開の合図を送った。

「さあ、諸君。オペレーション・レストの開始だ。……レイに気取られるなよ。彼が明日、絶望という名の休息に安らげるように」

 扉が開く。
 戻ってきたレイモンドは、室内の妙にキビキビとした、そして自分から視線を逸らすメンバーたちの空気に眉を潜めた。

「……おい。何だ、この妙な緊張感は。またセオドリックがろくでもない理想(ゆめ)を語ったのか?」
「いいや、レイ。みんな、君の仕事ぶりに感銘を受けて、やる気に満ち溢れているだけだよ」
 セオドリックは、親友の肩に手を置き、その隈の深さを愛おしむように見つめた。

(明日には、君をこの地獄から救い出してあげるからね、レイ)

 レイモンドは背筋がゾワつくのを感じたが、まさか自分の全権限が剥奪される前兆であろうとは、知る由もなかった。