「会長、おはようございます!」
「ああ、おはよう」
「生徒会長、今日もいいお天気ですね」
「そうだね」
季節は冬。
王立ラプラス魔導アカデミーの朝、セオドリックは生徒会室へ向かっていた。
ランカスター公爵家の嫡男であり、学園の生徒会長、セオドリック・フォン・ランカスター。
彼は、寄せては返す波のような挨拶の群れを、完璧な微笑で受け流していた。
それは彼にとって呼吸と同じ、生まれ持った正義の体現だった。
だが、生徒会室の重厚な扉を開け、その一番奥に視線を走らせた瞬間、彼の本能は警鐘を鳴らした。
「……セオドリック。今すぐ魔導特区の予算修正案を検分しろ。三箇所、構成に無駄があったから書き換えておいた」
飛んできたのは、冷淡な声。
彼は生徒会の副会長、レイモンド・アシュクロフトだ。
書類の山に囲まれ、羽ペンを走らせるその姿は、一見すればいつも通りの有能な副会長。だがセオドリックの瞳は、彼の『崩壊の予兆』を捉えていた。
「おはよう、レイ。……顔色が悪いね」
セオドリックは、レイモンドのデスクに歩み寄る。
近くで見れば、その疲弊は一目瞭然だった。レイモンドの顔色は、不健康な青白さを帯びている。何より、隈が酷い。
