琥珀色の雪解け

私の名前は六花。
雪の結晶を意味する、この季節にぴったりの名前だ。
けれど、私の人生には雪のような清らかさも、結晶のような美しさもなかった。

「本当に役立たずね。」
高い、濁った声がリビングに響き渡る。
私は俯いたまま、感覚がなくなりきった肩を丸めて、静かにその声を聞く。
視線の先には母親がいた。その隣には床に散らかったたくさんの洋服たちが無造作に置かれていた。
それは私が洗濯をしようとした時に散らかしてしまったものだった。
母親は私に土下座させて耳に響くような声で怒鳴り始める。
でも、私は返事をしない。

返事をしなければ怒鳴られ、返事をすれば「口答えをするな」と頬を引っ叩かれる。
この家は私にとって冷たい牢獄のような場所だった。
母親の足音が近づくたびに、心臓が痛いほど脈打つ。父親は隣の部屋へ行き、こちらのことを見ようともしなかった。
二人にとって、私は自分の平穏を乱すだけの「不運な象徴」でしかない。

こんな場所、早く抜け出したい。だが、私には何処にも居場所がなかった。
学校へ行けば、そこにはまた、別の地獄が待っていた。
教科書に大きく書かれた「死ね」の文字。上履きの中に入れられた土。
家にも学校にも安心できる居場所は何処にもなかった。

「さっさと消えてしまいたい」

その願いだけが、私の中で唯一、熱を持っていた。
外は予報通り、大吹雪が始まろうとしていた。
私は、何も持たず、コートだけを着て玄関の扉を開けた。靴を履く音も立てず、真っ白な世界へと溶け出した。
行き先なんて、どこでも良かった。ただ、この体温が無くなる場所まで。吹き荒れる白い世界へと踏み出した。