琥珀色の雪解け

2025年 11月
金沢に、再び冷たい風が吹き始めた。
あの吹雪の夜からもうすぐ五年が経とうとしている。
高校の文化祭で描き上げた、あの「琥珀色の光」の絵は、県のコンクールで佳作に入った。
賞状を受け取ったとき、真っ先に思い浮かんだのは、私の名前も知らないあの二人の顔だった。
「・・・行こう」
私は日曜日の午後、あの場所へ向かうことを決めた。
バスを降り、見慣れた国道を歩く。
あの夜はあんな遠く、絶望の果てにあるように思えた道のりが、今はなんてことない普通の街路に感じられる。
遠くにあのうさぎの看板が見えた。
心臓が少しだけ速く脈打つ。足元がふわふわして、まるで別の世界に足を踏み入れたような緊張感があった。

自動ドアの前に立つ。
チャイム音が響き、中に入るとあの時と同じ「清潔な太陽の匂い」が私を包みこんだ。
店内には家族連れや妊婦さんが数人いた。皆、幸せそうな顔をしている。
私は自分の服を少し整え、レジの方を見る。
そこに立っているのは、あの時の店長さんでも店員さんでもない。
あの後、私は一度だけ無茶を言ってこの店に連れて行ってもらった。
その時に店の人に聞いた。
店長さんも店員さんも移転したという報告を。
店長さんに至っては、あの日の次の日に移転することが随分と前に決まっていたという。
もう、会えないあの二人。
でも、今でもあの日の残像を思い出す。
あの琥珀色の出逢いを。

店を出るとき、私は店の方へ振り返り一礼した。
外に出ると、空からはらはらと初雪が舞い始めていた。
冷たい雪。だけど、私の心はもう凍えていない。
私は自分の拳を見つめた。
あの夜、ここで受け取った温もりはもう誰かから与えられるのを待つものではなくなっていた。
私自身の血となって、私自身の言葉となって、内側から熱を放っている。

私は新しい雪の中を真っ直ぐ歩き出した。
私の名前は、六花。
世界で一番温かい琥珀色の記憶を持つ、冬の少女。
そんな冬の少女は今でも願っている。
名前も知らない貴方たちとの琥珀色の再会を一。