黒蛇様と契りの贄姫

「――本当に、無事でよかった。儀式の終わりにおまえが倒れた時は、気がおかしくなりそうだった。そのくらい心配だったのだ」

「桜河様……」

 それが花緒自身を心配してくれているのか、それとも花緒の前にいた贄を意識してなのかは判断がつかない。けれども、それを問えず、花緒は曖昧に微笑んだ。

「……ありがとう、ございます。私はこのとおり大丈夫でございます。むしろ、儀式を上手く遂行できずに申し訳ございません。全て私の不徳の致すところでございます」

「気にするな。順当とは言えなかったかもしれないが、結果的に儀式は上手くいった。おまえは贄姫の役目を立派に果たしたのだ」

「桜河様、ありがとうございます……!」

 桜河の気遣いが嬉しかった。それと共に申し訳なかった。嬉しさと悔しさ。その気持ちがない交ぜになって、一度止まった涙が花緒の瞳からぱたぱたと零れ落ちる。

 花緒は驚いて、着物の袖で涙を押さえようとする。

「も、申し訳ございません……! またこのような、はしたないっ……」