花緒が目を覚ましたのは、紫雲が夕空を染めるころだった。
天井の模様も、障子越しの光も見慣れている。――桜河の屋敷の自室だ。
体を起こそうとした瞬間、隣からかすかな寝息が聞こえた。視線を向けると、すぐそばに桜河の横顔がある。驚くほど近くに。
彼は、椅子に腰かけたまま眠っていた。花緒の手を包むようにその指が重なっていて、体温がじんわりと伝わった。
(……桜河様?)
思わず呼びかけそうになったが、その寝顔を見て言葉を飲み込む。彼の瞳の下にはうっすらと影ができている。自分が倒れたあと、ずっとそばにいてくれたのかもしれない。振り返るように記憶を辿る。神楽殿での〝浄化の儀〟――最後まで舞い終えたところまでは覚えているが、その後が曖昧だ。無理をしすぎて意識を失ったのだろう。
花緒は、ゆっくりと布団から身を起こす。その拍子に衣の裾がずれて、肩口に古傷がのぞいた。白い肌に沈む褐色の痕。泉水家で受けた折檻の傷跡だ。
天井の模様も、障子越しの光も見慣れている。――桜河の屋敷の自室だ。
体を起こそうとした瞬間、隣からかすかな寝息が聞こえた。視線を向けると、すぐそばに桜河の横顔がある。驚くほど近くに。
彼は、椅子に腰かけたまま眠っていた。花緒の手を包むようにその指が重なっていて、体温がじんわりと伝わった。
(……桜河様?)
思わず呼びかけそうになったが、その寝顔を見て言葉を飲み込む。彼の瞳の下にはうっすらと影ができている。自分が倒れたあと、ずっとそばにいてくれたのかもしれない。振り返るように記憶を辿る。神楽殿での〝浄化の儀〟――最後まで舞い終えたところまでは覚えているが、その後が曖昧だ。無理をしすぎて意識を失ったのだろう。
花緒は、ゆっくりと布団から身を起こす。その拍子に衣の裾がずれて、肩口に古傷がのぞいた。白い肌に沈む褐色の痕。泉水家で受けた折檻の傷跡だ。
