黒蛇様と契りの贄姫

 場を見かねた桜河が、花緒を守るように立ち上がろうとする。

「花緒、無理をするな。やはり俺が――」

「桜河様。……申し訳ありません。大丈夫です。やらせてください」

 桜河を制し、花緒は姿勢を正して仕切り直す。もう一度、その場で静かに一礼をした。仕切り直しを自分自身や周囲に示すように。

 ――シャラン、シャラシャラ、シャララ。

 静かに鈴の音を奏でる。花緒は頭の中で桜河の屋敷の光景を描いた。舞の稽古の風景。大広間で伸び伸びと舞っていた感覚を身体に降ろす。それと同時に、屋敷で自分の帰りを待っている山吹や蘭之介、梅やお蓮や瓢坊が頭を過った。

(必ず浄化の儀を成功させて、皆さんのところに帰りたい……!)

 そう強く願う。花緒の表情には凛とした迫力が戻って来ていた。

 辺り一面を濃く覆ってしまった毒気の中で、花緒は力強く舞い続ける。

(お願い、鎮まって……!)

 花緒は祈りを込める。

 そう願った瞬間、鈴と花緒の身体がまばゆい光を放った――。