梵天丸の視線の先。白い衣を纏った霊魂が蛇門を潜ってやって来る。
どうやら若い女のようだ。おそらく現世での名を失い、記憶も薄れているのだろう――目が虚ろだ。女は足元がおぼつかない様子で、裸足でよろよろと花畑を歩く。そうしてふらりと池の縁に座り込んだ。女の現世での昔の日の情景が水面に映る。
花緒が女の仕草を目で追っていると、女がふと顔を上げ、花緒と視線を合わせる。女は青白い顔で微笑んだ。
貴方の救いを待っています――そう伝えるかのように。
――あの人たちの気持ちに応えたい。私にもできる力があるのなら。
花緒の気持ちが奮い立つ。不安や恐怖、動揺は完全には拭えない。けれども、さきほどよりも手の震えは治まった。これならばきっと舞えるはず。
花緒の心が鎮まったのを見計らい、桜河が彼女の肩に片手を乗せる。
「花緒。神楽を舞う準備は整ったか?」
「はい。ご心配をおかけしました。だいぶ落ち着いてまいりました」
花緒は隣に並んだ桜河を見上げて微笑む。
その時、頃合いを待っていたかのように花緒たちの目の前に狐火が五つ浮かび上がった。それらは揺らめきながら、やがて四つともが次第に妖魔の形を取る。妖魔は、白く尖った耳と豊かな毛を持つ尾をしていた。
妖狐の一族だ。頭首の老齢の妖狐が白袴、他の四人は紫袴を着ている。
どうやら若い女のようだ。おそらく現世での名を失い、記憶も薄れているのだろう――目が虚ろだ。女は足元がおぼつかない様子で、裸足でよろよろと花畑を歩く。そうしてふらりと池の縁に座り込んだ。女の現世での昔の日の情景が水面に映る。
花緒が女の仕草を目で追っていると、女がふと顔を上げ、花緒と視線を合わせる。女は青白い顔で微笑んだ。
貴方の救いを待っています――そう伝えるかのように。
――あの人たちの気持ちに応えたい。私にもできる力があるのなら。
花緒の気持ちが奮い立つ。不安や恐怖、動揺は完全には拭えない。けれども、さきほどよりも手の震えは治まった。これならばきっと舞えるはず。
花緒の心が鎮まったのを見計らい、桜河が彼女の肩に片手を乗せる。
「花緒。神楽を舞う準備は整ったか?」
「はい。ご心配をおかけしました。だいぶ落ち着いてまいりました」
花緒は隣に並んだ桜河を見上げて微笑む。
その時、頃合いを待っていたかのように花緒たちの目の前に狐火が五つ浮かび上がった。それらは揺らめきながら、やがて四つともが次第に妖魔の形を取る。妖魔は、白く尖った耳と豊かな毛を持つ尾をしていた。
妖狐の一族だ。頭首の老齢の妖狐が白袴、他の四人は紫袴を着ている。
