花緒は、巫女装束に袖を通していた。お蓮から譲り受けた神楽鈴を手に取る。日々丹精を込めて磨き上げている鈴が花緒の気を鎮めるようにシャランと鳴る。
桜河と約束をした一カ月後――浄化の儀の日だ。これまで、お蓮の下で舞の研鑽を積んできた。だからきっと上手くいく。そう思える気持ちと、自分の力が及ぶのかという不安がないまぜになっていた。
花緒は和紙に包んだ桜の花弁を胸元にしまい込む。現世から持参したものだ。
(この花弁も、ずっと私を見ていてくれた。きっと今回も力を貸してくれるはず)
花緒は、真っ白な千早の上からそっと手を添えた。
準備は万端だ。気を落ち着けようと短く息を吐きだした矢先。障子の外から梅の声が掛けられた。
「花緒様。ご準備は整われたでしょうか。桜河様が門前でお待ちでございます」
「大丈夫です。今、参ります」
花緒はもう一度、姿見に映る自分と目を合わせる。鼓舞するように強く頷いた。
――大丈夫。きっと上手くいく。
障子を開け、梅の案内で屋敷の門へと向かう。玄関脇に並べられた編み目の美しい草履に白足袋の足を丁寧に通した。花緒は立ち上がり、家の中に向かって静かに一礼をする。すると、廊下の奥から山吹と蘭之介が見送りに出て来た。
花緒に歩み寄ると、まず山吹がひらひらと手を振る。
「花緒ちゃん。気をつけてね。無理はしないで」
「くれぐれも桜河の足を引っ張るなよ」
「はい。肝に銘じます」
桜河と約束をした一カ月後――浄化の儀の日だ。これまで、お蓮の下で舞の研鑽を積んできた。だからきっと上手くいく。そう思える気持ちと、自分の力が及ぶのかという不安がないまぜになっていた。
花緒は和紙に包んだ桜の花弁を胸元にしまい込む。現世から持参したものだ。
(この花弁も、ずっと私を見ていてくれた。きっと今回も力を貸してくれるはず)
花緒は、真っ白な千早の上からそっと手を添えた。
準備は万端だ。気を落ち着けようと短く息を吐きだした矢先。障子の外から梅の声が掛けられた。
「花緒様。ご準備は整われたでしょうか。桜河様が門前でお待ちでございます」
「大丈夫です。今、参ります」
花緒はもう一度、姿見に映る自分と目を合わせる。鼓舞するように強く頷いた。
――大丈夫。きっと上手くいく。
障子を開け、梅の案内で屋敷の門へと向かう。玄関脇に並べられた編み目の美しい草履に白足袋の足を丁寧に通した。花緒は立ち上がり、家の中に向かって静かに一礼をする。すると、廊下の奥から山吹と蘭之介が見送りに出て来た。
花緒に歩み寄ると、まず山吹がひらひらと手を振る。
「花緒ちゃん。気をつけてね。無理はしないで」
「くれぐれも桜河の足を引っ張るなよ」
「はい。肝に銘じます」
