簪に目をやったままの花緒を、桜河が覗き込んだ。
「……その簪が気に入ったのか?」
「ひゃ! いや、あの、ええと……」
桜河に突然顔を覗き込まれて、花緒はしどろもどろになる。黄金色の切れ長の瞳は息を呑むようだ。妖艶なほどに整った面立ち。彼自身には、己が脅威の美貌であるという自覚はなさそうだけれど。
花緒は桜河から視線を逸らした。ふと目に入った簪の値札に、思わず小さく息を呑む。花緒はいまや〝王の贄〟として正式に契りを交わし、その証である痣を見せれば、どんな品でも屋敷付けで自由に買うことができる立場だ。けれど、質素に暮らしてきた身には、こうした贅沢はどうにも落ち着かない。
(このような高価な簪、自分にはもったいない)
心の奥で呟き、良い物を見せてもらっただけにしておこうと決めた。
花緒は桜河に首を左右に振って答える。
「いいえ。素敵だなと見ていただけです。――店主様、品物をお見せくださってありがとうございます」
「ああ。よろしければまたどうぞ」
店主に断り、花緒は小間物屋を後にする。
花緒の背中を、桜河がなにか言いたげな視線で追っていた。
「……その簪が気に入ったのか?」
「ひゃ! いや、あの、ええと……」
桜河に突然顔を覗き込まれて、花緒はしどろもどろになる。黄金色の切れ長の瞳は息を呑むようだ。妖艶なほどに整った面立ち。彼自身には、己が脅威の美貌であるという自覚はなさそうだけれど。
花緒は桜河から視線を逸らした。ふと目に入った簪の値札に、思わず小さく息を呑む。花緒はいまや〝王の贄〟として正式に契りを交わし、その証である痣を見せれば、どんな品でも屋敷付けで自由に買うことができる立場だ。けれど、質素に暮らしてきた身には、こうした贅沢はどうにも落ち着かない。
(このような高価な簪、自分にはもったいない)
心の奥で呟き、良い物を見せてもらっただけにしておこうと決めた。
花緒は桜河に首を左右に振って答える。
「いいえ。素敵だなと見ていただけです。――店主様、品物をお見せくださってありがとうございます」
「ああ。よろしければまたどうぞ」
店主に断り、花緒は小間物屋を後にする。
花緒の背中を、桜河がなにか言いたげな視線で追っていた。
