桜河の表情はあくまで真剣そのものだ。言葉が直球な分、花緒は赤面してしまう。
誰かが自分を知ろうとしてくれたのは、生まれて初めてのことだった。自分に興味を持って貰うのが初めてで、花緒はうろたえてしまう。自分をどう言葉にしたら良いのかわからなかった。
花緒は悩んだ末、言葉よりも行動で伝えるようと試みる。花緒はきょろきょろと周囲を見渡す。市場の一角に銀細工や木工細工、陶器を並べる小間物屋が目に付いた。装身具には色とりどりの硝子玉が嵌め込まれている。昼下がりの陽を受けて輝く簪や髪飾り、帯留め。花緒は無意識にそちらに目をやる。
桜河がそんな花緒を見やった。
「あの店が気になるのか?」
「えっと……はい。キレイだなって」
「よし。ならば見に行こう」
桜河は花緒の手を掴み、一直線に小間物屋を目指していく。花緒は急に取られた手に驚いたけれど、桜河は気にした様子もない。その朴訥なところが彼らしくて、花緒は小さく笑みを零した。彼に気づかれないよう、彼と繋がっている手に少しだけ力を込める。
彼に手を引かれるまま小間物屋の前までやってくると、勘定帳に筆を走らせていた店主が顔を上げた。
「おやおや。お買い物ですかい? お嬢さん、今日は新しい簪が入っておりますよ」
「簪……」
店主が、脇に据えられた桐箱を花緒に差し出す。そこには初めて目にする様々な美しい簪が並べられていた。鼈甲のつるりとした簪が日の光を受けて琥珀色に煌めいている。漆塗りの黒い簪には桜や菊が繊細な蒔絵で描かれていた。艶やかな簪の中でも、一際花緒の目を引いたのは銀細工の簪だった。
先端に小さな鈴と桜の花弁が揺れている。髪に差せば、きっと歩くたびにシャラシャラと微かな音を立てるだろう。
小さな鈴は神楽鈴。桜の花弁は桜河を表すようだ。自分の身近なものを連想させる簪。まるで大切なものを見つめるように、花緒はその簪に釘付けになる。
誰かが自分を知ろうとしてくれたのは、生まれて初めてのことだった。自分に興味を持って貰うのが初めてで、花緒はうろたえてしまう。自分をどう言葉にしたら良いのかわからなかった。
花緒は悩んだ末、言葉よりも行動で伝えるようと試みる。花緒はきょろきょろと周囲を見渡す。市場の一角に銀細工や木工細工、陶器を並べる小間物屋が目に付いた。装身具には色とりどりの硝子玉が嵌め込まれている。昼下がりの陽を受けて輝く簪や髪飾り、帯留め。花緒は無意識にそちらに目をやる。
桜河がそんな花緒を見やった。
「あの店が気になるのか?」
「えっと……はい。キレイだなって」
「よし。ならば見に行こう」
桜河は花緒の手を掴み、一直線に小間物屋を目指していく。花緒は急に取られた手に驚いたけれど、桜河は気にした様子もない。その朴訥なところが彼らしくて、花緒は小さく笑みを零した。彼に気づかれないよう、彼と繋がっている手に少しだけ力を込める。
彼に手を引かれるまま小間物屋の前までやってくると、勘定帳に筆を走らせていた店主が顔を上げた。
「おやおや。お買い物ですかい? お嬢さん、今日は新しい簪が入っておりますよ」
「簪……」
店主が、脇に据えられた桐箱を花緒に差し出す。そこには初めて目にする様々な美しい簪が並べられていた。鼈甲のつるりとした簪が日の光を受けて琥珀色に煌めいている。漆塗りの黒い簪には桜や菊が繊細な蒔絵で描かれていた。艶やかな簪の中でも、一際花緒の目を引いたのは銀細工の簪だった。
先端に小さな鈴と桜の花弁が揺れている。髪に差せば、きっと歩くたびにシャラシャラと微かな音を立てるだろう。
小さな鈴は神楽鈴。桜の花弁は桜河を表すようだ。自分の身近なものを連想させる簪。まるで大切なものを見つめるように、花緒はその簪に釘付けになる。
