翌日。屋敷の大広間へと向かう花緒は、朝靄の残る廊下をひとり歩いていた。横に広がる庭園から何頭もの蝶がひらひらとやってきては花緒の周りで戯れている。
これから始まる舞の稽古を前に緊張している自分を鼓舞してくれているのだろうか。束の間の安らぎに顔が綻ぶ。そうして襖の前で足を止めたと同時に、ひとつの声に招かれた。
「来はったなぁ。入っといで」
声の主は襖の中にいるようだ。鈴の鳴るような、柔らかくも落ち着きのある女の声だった。花緒は一つ、呼吸を深くした。
(……大丈夫、行こう)
意を決して襖を開くと、黒髪を丁寧に結い上げた女が中央に座していた。その奥には、雅楽器を手にした伶人たちがずらりと並んでいる。常世特有のものなのか、見慣れない楽器を手にしている者たちもいる。
自分の舞は常世で通じるのだろうか。一気に緊張が高まる。
「ほ、本日はよろしくお願いいたします」
花緒は畳に三つ指を揃え、頭を垂れる。心臓が痛いぐらいに早鐘を打っていた。顔を上げられない花緒の頭上に、けらけらと女の笑い声が降り注ぐ。
「そないに緊張しなさんな。お体強張っとっては、あんじょう舞えまへんよ」
「も、申し訳ございません……」
これから始まる舞の稽古を前に緊張している自分を鼓舞してくれているのだろうか。束の間の安らぎに顔が綻ぶ。そうして襖の前で足を止めたと同時に、ひとつの声に招かれた。
「来はったなぁ。入っといで」
声の主は襖の中にいるようだ。鈴の鳴るような、柔らかくも落ち着きのある女の声だった。花緒は一つ、呼吸を深くした。
(……大丈夫、行こう)
意を決して襖を開くと、黒髪を丁寧に結い上げた女が中央に座していた。その奥には、雅楽器を手にした伶人たちがずらりと並んでいる。常世特有のものなのか、見慣れない楽器を手にしている者たちもいる。
自分の舞は常世で通じるのだろうか。一気に緊張が高まる。
「ほ、本日はよろしくお願いいたします」
花緒は畳に三つ指を揃え、頭を垂れる。心臓が痛いぐらいに早鐘を打っていた。顔を上げられない花緒の頭上に、けらけらと女の笑い声が降り注ぐ。
「そないに緊張しなさんな。お体強張っとっては、あんじょう舞えまへんよ」
「も、申し訳ございません……」
