そんな空気を感じ取ったのか、山吹が気まずそうに後ろ頭を掻く。
「ごめん、ごめん。重くしすぎたかな。――ところでさ、常世では醤油の団子が主流なんだけど、現世ではどうなの?」
「えっと、そうですね。みたらし団子もありましたし、黄粉(きなこ)とか、餡子(あんこ)とか、いろいろな味がありました。幼い頃の記憶なので、うまく説明できませんが」
「へえ、黄粉の団子か。初耳だな。なんだか香ばしい良い匂いがしそうだね」
「お団子ひとつ取っても、似ているようで、少しずつ違う文化なんですね」
花緒も山吹に同意する。山吹はこれをきっかけとばかりに、何気なく口火を切る。
「そうそう。……実はさ、おれ、現世には行ったことがないんだ。でも、いつか見てみたいと思っていてね」
「え? 山吹さんでも、現世に渡ったことがないんですか?」
妖の王である桜河の側近ならば、現世に行く機会もあるのではないかと思っていた。けれども、おいそれと現世と常世は行き来できないのだろうか。
山吹が頷く。
「うん。常世から現世に渡る門は、滅多に誰も通れない聖域だからね。行けるのは王か、命を終えた人間の霊くらいだよ。ただ――おれの母親が人間なんだ。だから、ほんの少し興味があってね」
「人間の……?」
桜河が静かに言葉を継ぐ。
「山吹は、烏天狗の父親と人間の母親をもつ半妖なのだ」
「半妖、ですか……」
山吹が苦笑し、肩をすくめる。
「まあ、そんな複雑な身の上もあるってことで。詳しい話は、団子でも齧りながら話そうか」
花緒は思わず小さく笑った。張り詰めていた空気が、わずかにほぐれていく。
「ごめん、ごめん。重くしすぎたかな。――ところでさ、常世では醤油の団子が主流なんだけど、現世ではどうなの?」
「えっと、そうですね。みたらし団子もありましたし、黄粉(きなこ)とか、餡子(あんこ)とか、いろいろな味がありました。幼い頃の記憶なので、うまく説明できませんが」
「へえ、黄粉の団子か。初耳だな。なんだか香ばしい良い匂いがしそうだね」
「お団子ひとつ取っても、似ているようで、少しずつ違う文化なんですね」
花緒も山吹に同意する。山吹はこれをきっかけとばかりに、何気なく口火を切る。
「そうそう。……実はさ、おれ、現世には行ったことがないんだ。でも、いつか見てみたいと思っていてね」
「え? 山吹さんでも、現世に渡ったことがないんですか?」
妖の王である桜河の側近ならば、現世に行く機会もあるのではないかと思っていた。けれども、おいそれと現世と常世は行き来できないのだろうか。
山吹が頷く。
「うん。常世から現世に渡る門は、滅多に誰も通れない聖域だからね。行けるのは王か、命を終えた人間の霊くらいだよ。ただ――おれの母親が人間なんだ。だから、ほんの少し興味があってね」
「人間の……?」
桜河が静かに言葉を継ぐ。
「山吹は、烏天狗の父親と人間の母親をもつ半妖なのだ」
「半妖、ですか……」
山吹が苦笑し、肩をすくめる。
「まあ、そんな複雑な身の上もあるってことで。詳しい話は、団子でも齧りながら話そうか」
花緒は思わず小さく笑った。張り詰めていた空気が、わずかにほぐれていく。
