「さあ、着いたぞ」
桜河と山吹と共に降り立ったのは、川沿いに長く続く市場だった。木造の屋台が軒を連ね、新鮮な大根やカブが籠に盛られ、川魚が桶で跳ねている。柳が揺れる川岸では妖魔と人間の子どもたちが水遊びをし、賑わいが溢れていた。花緒は目を丸くする。
「とても活気がありますね! 皆楽しそう」
「それも桜河のおかげさ。妖の王になってから狂妖が減って平和になったんだよ」
「狂妖……?」
山吹の言葉を拾い、花緒が桜河を見上げる。
「毒気に狂わされた妖魔のことだ。人間や他の妖を喰らう恐ろしい存在。常世の者にとっては脅威だな」
花緒は息を呑む。
「もしかして、過去に人間が贄を献上しなかった時、妖の王が現世を蹂躙したのは……王自らが狂妖となったから、だったのですか?」
「そうだよ。桜河だって例外じゃない。黒姫国が平和なのは、桜河が一身に毒気を受け止めている証といえるね」
「そんなに褒めてくれるな。俺にできるのは、せいぜい目の届く範囲を守ることだけだ。それ以上を望まれても、応えられるとは限らない」
桜河が淡々と告げる。その横顔には、威厳よりも静かな決意が宿っていた。
山吹が苦笑混じりに肩をすくめる。
「まったく、桜河は自分のことを過小評価しすぎだよ。常世でも、おまえほど頼りになる王はいないって、皆が口を揃えて言っているのに」
「……頼られるのは、悪いことではない。ただ、それに見合うだけの〝覚悟〟を持っていたいだけだ」
桜河は短くそう答え、視線を遠くへ向けた。
花緒は二人のやり取りを見つめ、胸が温かくなる。
(桜河様と山吹さん、深い絆で結ばれていらっしゃる……羨ましいな)
桜河が花緒に視線を移す。
「花緒、この国をおまえと共に守りたい。力を貸してくれるか?」
花緒は頷き、決意を込める。
「はい、私も全力を尽くします!」
桜河と山吹と共に降り立ったのは、川沿いに長く続く市場だった。木造の屋台が軒を連ね、新鮮な大根やカブが籠に盛られ、川魚が桶で跳ねている。柳が揺れる川岸では妖魔と人間の子どもたちが水遊びをし、賑わいが溢れていた。花緒は目を丸くする。
「とても活気がありますね! 皆楽しそう」
「それも桜河のおかげさ。妖の王になってから狂妖が減って平和になったんだよ」
「狂妖……?」
山吹の言葉を拾い、花緒が桜河を見上げる。
「毒気に狂わされた妖魔のことだ。人間や他の妖を喰らう恐ろしい存在。常世の者にとっては脅威だな」
花緒は息を呑む。
「もしかして、過去に人間が贄を献上しなかった時、妖の王が現世を蹂躙したのは……王自らが狂妖となったから、だったのですか?」
「そうだよ。桜河だって例外じゃない。黒姫国が平和なのは、桜河が一身に毒気を受け止めている証といえるね」
「そんなに褒めてくれるな。俺にできるのは、せいぜい目の届く範囲を守ることだけだ。それ以上を望まれても、応えられるとは限らない」
桜河が淡々と告げる。その横顔には、威厳よりも静かな決意が宿っていた。
山吹が苦笑混じりに肩をすくめる。
「まったく、桜河は自分のことを過小評価しすぎだよ。常世でも、おまえほど頼りになる王はいないって、皆が口を揃えて言っているのに」
「……頼られるのは、悪いことではない。ただ、それに見合うだけの〝覚悟〟を持っていたいだけだ」
桜河は短くそう答え、視線を遠くへ向けた。
花緒は二人のやり取りを見つめ、胸が温かくなる。
(桜河様と山吹さん、深い絆で結ばれていらっしゃる……羨ましいな)
桜河が花緒に視線を移す。
「花緒、この国をおまえと共に守りたい。力を貸してくれるか?」
花緒は頷き、決意を込める。
「はい、私も全力を尽くします!」
