黒蛇様と契りの贄姫

 花緒は桜河の生真面目な性格を考える。きっと黒姫国の妖魔を守るため、多少無理をしてでもひとりで頑張ってしまうのではないだろうか。

(あまり感情を表に出さない方だから、辛くても隠してしまわれるかもしれない)

 もしも彼がひとりで無理をして毒気を背負い、耐えているのだとしたら。

 ――自分は、一刻も早く浄化を行わなければならない。

 逸る気持ちのままに前のめりになる花緒に、瓢坊は優しい眼差しを向けた。

「花緒様はお優しい方でいらっしゃいますなあ。桜河様のご体調をお気にかけてくださっておるのですな」

「は、はい。桜河様は弱き者を守ってくださる誠実な方です。無力な私も優しく導いてくださいました。ですから、ご無理をなさっていないか心配で……って、私などが差し出がましいことを。申し訳ございません」

「いやいや。謝罪する理由など何ひとつありませんな。桜河様は幸せ者じゃ。花緒様のように身を案じてくださるおなごが、そばにいるのですからな」

 ほっほっほ、と瓢坊は上機嫌に笑っている。花緒は顔から火が出そうだった。自分で感じている以上に、自分は桜河を気にかけているらしい。

 それはきっと、彼を身近に感じ始めているからだろう。それを実感して気恥ずかしくなってしまう。

 瓢坊はひとしきり笑った後、ふと表情を引き締める。

「桜河様のお体にはご負担がかかっております。それは事実でございますぞ」

「やはり、そうなのですか……」

「現世からもたらされる毒気は、妖魔の気を狂わせるもの。桜河様はそれを身に受けるのです。たとえ自身の体内で解毒できるとはいえ、辛さが消えるわけではない」

「はい……」

「桜河様のお力になってくだされ、花緒様。貴方の存在は、きっと桜河様の支えになりましょうぞ。それはひいては黒姫国の守護にも繋がりますからな」

「承知いたしました。これからも精進してまいります。ご指導よろしくお願いいたします、瓢坊先生」