突然告げられた事実に、花緒はどぎまぎしてしまう。そのように長い歳月を待っていてくれただなんて。
翁は、困惑している花緒を温かく見守る。
「さて、与太話はこの辺にさせていただこうかのう。改めて、わしは瓢坊と申しますじゃ。花緒様のお役に立てるよう尽力いたしますぞ」
「先生。泉水花緒と申します。お会いできまして光栄でございます。本日から何卒よろしくお願いいたします」
瓢坊は挨拶もそこそこに、湯呑みを脇に避けて話し始める。
「それでは時間も限られております故、さっそく第一回の講義を始めますぞ。――花緒様。常世での贄姫の役割についてどの程度ご存知ですかな?」
「ええと。現世から東西南北の門を通じて常世へとやって来る魂の毒気を浄化する役目です。そのためにお神楽を舞い、舞を奉納いたします」
卓を挟んで瓢坊の真向いに座した花緒。窺うように瓢坊の質問に答える。瓢坊はお茶をひと口啜った。
「そのとおりですじゃ。桜河様の贄姫となった花緒様の舞には妖力が宿る。その舞は現世からもたらされた魂の穢れを祓えますじゃ。これは現世から常世に渡った贄姫にしかできぬ。これが花緒様のお役目ですな」
瓢坊は卓の上に常世の地図を広げる。
「桜河様の治める黒姫国。現世から魂が渡って来る北の門は、国の左上にございますじゃ。この門の前で、花緒様にはお神楽を舞い、舞を奉納していただきます。魂の邪気を祓い、場を清めるのです。この儀式を『浄化の儀』と呼びますじゃ」
「……瓢坊先生。それについてなのですが、私が贄姫となる前は桜河様がおひとりで毒気の対処をなさっていたとお聞きしました。その、桜河様のお体は大丈夫なのですか? ご無理をなさっておいでだったのでは……」
翁は、困惑している花緒を温かく見守る。
「さて、与太話はこの辺にさせていただこうかのう。改めて、わしは瓢坊と申しますじゃ。花緒様のお役に立てるよう尽力いたしますぞ」
「先生。泉水花緒と申します。お会いできまして光栄でございます。本日から何卒よろしくお願いいたします」
瓢坊は挨拶もそこそこに、湯呑みを脇に避けて話し始める。
「それでは時間も限られております故、さっそく第一回の講義を始めますぞ。――花緒様。常世での贄姫の役割についてどの程度ご存知ですかな?」
「ええと。現世から東西南北の門を通じて常世へとやって来る魂の毒気を浄化する役目です。そのためにお神楽を舞い、舞を奉納いたします」
卓を挟んで瓢坊の真向いに座した花緒。窺うように瓢坊の質問に答える。瓢坊はお茶をひと口啜った。
「そのとおりですじゃ。桜河様の贄姫となった花緒様の舞には妖力が宿る。その舞は現世からもたらされた魂の穢れを祓えますじゃ。これは現世から常世に渡った贄姫にしかできぬ。これが花緒様のお役目ですな」
瓢坊は卓の上に常世の地図を広げる。
「桜河様の治める黒姫国。現世から魂が渡って来る北の門は、国の左上にございますじゃ。この門の前で、花緒様にはお神楽を舞い、舞を奉納していただきます。魂の邪気を祓い、場を清めるのです。この儀式を『浄化の儀』と呼びますじゃ」
「……瓢坊先生。それについてなのですが、私が贄姫となる前は桜河様がおひとりで毒気の対処をなさっていたとお聞きしました。その、桜河様のお体は大丈夫なのですか? ご無理をなさっておいでだったのでは……」
