黒蛇様と契りの贄姫

 桜河の返答に、花緒は項垂れる。花緒の不安を感じ取ったのか、桜河が言葉を添える。

「心配しなくても良い。おまえさえよければ、今晩執り行う」

「今晩、ですね。ありがとうございます。どちらへ参ればよろしいでしょうか?」

「――俺の私室へ来てほしい」

 桜河の何気ないひと言に、花緒は身体を強張らせる。
 皆が寝静まった時間に殿方の部屋を訪れて妖の王と贄姫の契りを交わす。今までの桜河の話をまとめるとそのようになる。それは一体、どのような手順なのだろう。

(私は桜河様と、何を共にすることになるのだろう……)

 夜伽については知識でしか知らない。到底実感など湧かなかった。
 肝心の桜河はと言えば、花緒の表情が強張ったのを感じたのか、自分の発言の何が問題だったのかと首を傾げている。

(ともかく、やってみなければお役目を果たせないわ。私に拒否権はないのだから)

 花緒は動揺しながらも、自分を奮い立たせた。