そうして今宵も桜河との夕餉の時間を迎え、彼の待つ奥の間へと入室すると――花緒を出迎えたのはいつもの顔触れである桜河と梵天丸だけではなかった。見慣れないふたりの男の妖魔が膳の前に腰かけていたのだ。
てっきり桜河ひとりか、梵天丸が一緒にいるだけだろうと考えていた花緒は、予想外に人が多くてたじろいでしまう。
ふたりの男は、桜河の膳を挟んで両隣に向き合って座っていた。その内のひとりの男が花緒を見るなり盛大に拍手をする。
「お、噂の贄姫ちゃんのご登場か! 可愛い子じゃないの!」
「山吹、うるさい。花緒が困っている」
桜河が山吹と呼んだ男は、名前どおり山吹色のさらさらとした髪をした美丈夫だった。明るい性格を感じさせる人懐こそうな瞳は若草色だ。年の頃は花緒よりふたつかみっつ上といったところだろうか。背丈も花緒とそう変わらないだろう。山伏を連想させる修験装束を纏っている。傍らに立てかけてあるヤツデの葉を束ねた羽団扇が目を惹いた。
入り口に立ったままの花緒に、山吹が歯を見せて快活に笑う。
「初めまして。おれは烏天狗の山吹。花緒ちゃんって呼んでいい?」
「あ、は、はい。泉水花緒と申します。お初にお目にかかります、山吹様」
花緒と山吹が自己紹介を終えたのを見計らってか、山吹の向かいの男が顔を上げる。
「山吹。馴れ馴れしくするんじゃねえ。まだ信頼できる奴かわからねえんだぞ」
「お堅いねえ、蘭ちゃんは」
山吹に蘭ちゃんと呼ばれた向かいの男は、花緒を睨むように見ている。男は朱色の長髪に、冷たい鋭さのある切れ長の目をしていた。
瞳の色は紺色だ。年齢は桜河と同じくらいであろう。座していてもわかるくらいに身長が高そうだ。
ひょっとしたら花緒が見上げなければならないほどの長身かもしれない。何を置いても一番の特徴は、彼の頭から突き出た二本の角だ。道着のような白色の衣装を、肩半分をはだけさせて着崩している。
道着から覗く胸元が筋肉隆々で彼の腕っぷしの強さを伝えていた。山吹が肩をすくめる。
てっきり桜河ひとりか、梵天丸が一緒にいるだけだろうと考えていた花緒は、予想外に人が多くてたじろいでしまう。
ふたりの男は、桜河の膳を挟んで両隣に向き合って座っていた。その内のひとりの男が花緒を見るなり盛大に拍手をする。
「お、噂の贄姫ちゃんのご登場か! 可愛い子じゃないの!」
「山吹、うるさい。花緒が困っている」
桜河が山吹と呼んだ男は、名前どおり山吹色のさらさらとした髪をした美丈夫だった。明るい性格を感じさせる人懐こそうな瞳は若草色だ。年の頃は花緒よりふたつかみっつ上といったところだろうか。背丈も花緒とそう変わらないだろう。山伏を連想させる修験装束を纏っている。傍らに立てかけてあるヤツデの葉を束ねた羽団扇が目を惹いた。
入り口に立ったままの花緒に、山吹が歯を見せて快活に笑う。
「初めまして。おれは烏天狗の山吹。花緒ちゃんって呼んでいい?」
「あ、は、はい。泉水花緒と申します。お初にお目にかかります、山吹様」
花緒と山吹が自己紹介を終えたのを見計らってか、山吹の向かいの男が顔を上げる。
「山吹。馴れ馴れしくするんじゃねえ。まだ信頼できる奴かわからねえんだぞ」
「お堅いねえ、蘭ちゃんは」
山吹に蘭ちゃんと呼ばれた向かいの男は、花緒を睨むように見ている。男は朱色の長髪に、冷たい鋭さのある切れ長の目をしていた。
瞳の色は紺色だ。年齢は桜河と同じくらいであろう。座していてもわかるくらいに身長が高そうだ。
ひょっとしたら花緒が見上げなければならないほどの長身かもしれない。何を置いても一番の特徴は、彼の頭から突き出た二本の角だ。道着のような白色の衣装を、肩半分をはだけさせて着崩している。
道着から覗く胸元が筋肉隆々で彼の腕っぷしの強さを伝えていた。山吹が肩をすくめる。
