黒蛇様と契りの贄姫

 常世の世界は、中央の〝黄門〟を囲むようにして東西南北に広がる四つの国からなる。
 東の青津国、西の白瀬国、南の赤陽国。現在花緒たちがいるのは、北に位置する黒姫国である。
 それぞれの国には現世と常世を繋ぐ〝門〟が存在する。現世で死んだ人間の魂は、輪廻転生のために四つの門のいずれかを通って常世へとやって来る。この時、魂は大なり小なり煩悩や邪気を孕んだ状態で門を通る。常世において、その煩悩や邪気を毒気と呼ぶらしい。毒気を孕んだ魂を浄化しないままでいると、魂は正気を保てずに消失したり、気が触れて低級妖魔へと変貌したりする。低級妖魔は人間も妖魔も見境なく襲ってしまう。低級妖魔が増えれば増えるほど、国の治安が傾いてしまうのだ。
 そのような災いが起きないよう、魂の毒気を浄化し、健全な状態で常世へと受け入れるのが、四つの国を統制する四人の〝妖の王〟の役目らしい。そして、そのうちのひとりが黒姫国の妖の王、桜河であった。

「―――だが、俺には魂を浄化できないのだ」

「え……どういう意味でしょうか?」