黒蛇様と契りの贄姫

 桜河は何から話したらいいものかと考える。

「贄姫。まずは確認したいのだが、おまえのような人間がなぜ常世に送られるのか知っているか?」

「それは、妖の王に贄として喰われるためだと聞いております。贄姫の血は妖魔の万病を癒せる。ですから、妖の王の力を高める役目だと承知しておりました」

「それは誤解だ。たとえ贄姫の血を喰らったとしても俺の力は高まらない」

 きっぱりと否定されて、花緒は言葉を失う。
 それでは何故、自分は贄姫として黒蛇に捧げられたのだろう。
 自分の役割とは、いったい――。
 花緒は桜河の次の言葉を待つ。桜河の代わりに口を開いたのは梵天丸だった。

「贄姫の役割は、現世から常世にもたらされる毒気を浄化する役目ダ!」

「毒気? 浄化?」

 花緒は梵天丸の得意そうに振っている尻尾を見つめる。

(ここから先は、私の知らない領域かもしれない)

 花緒は気を引き締めて、面前の桜河を見上げる。桜河は頷いた。

「常世は四つの門から発生している毒気に侵されているのだ」

「毒……」

「梵天丸。悪いがそこにある地図をとってくれないか」

 桜河は梵天丸から古びた巻物を受け取ると、花緒の前に広げた。