ふと、胸もとから光が漏れているのに気づく。花緒が光源を取り出すと、それは和紙に包まれた桜の花弁だった。
(あなたも力を貸してくれるの?)
桜の花弁は眩い光を放ちながら、桜流しの中をただひとつ、ふわりふわりと昇っていく。やがてその光に共鳴するように床に落ちていた花弁たちが舞い上がり、光を放ちながら桜河の周りに集まり始めた。
天に立ち昇っていく桜の嵐。それは桜河に纏わりついていた毒気を清め、流していく。それと同時に、周囲の蔓延していた黒い靄をも祓い、蘇らせていった。
山吹が呆然と舞い上がる桜の花びらを見上げる。
「……贄姫の浄化の力か。けれど、これまでの贄たちは蛇門の毒気を祓えても、毒に侵された狂妖を救うことはできなかった。桜河のように狂妖へと堕ちかけた者も同じだ。救う術は存在しなかった。――けれど、今のこれは違う。浄化の異能とはまったく別の妖力の流れを感じる。こんな力を見るのは初めてだ……」
「……キレイだナ。温かくて、ほっとする。これが花緒の力なんだナ」
「本当に。俺たちはたった今、歴代最強の贄姫の誕生を目の当たりにしたんだね」
山吹が、心底ほっとしたように、いたずらっぽく花緒に笑いかける。
山吹の緊張の解けた様子を見て、花緒は自分の浄化が上手くいったのだとわかった。桜河の窮地を救えたのだと悟った。
次第に桜の嵐は収まり、部屋に静寂が訪れる。
花緒は、桜河の手を頬に添えたまま、彼の無事を確かめる。桜河の顔色が血の気を取り戻していた。彼の体を侵食していた毒気を立ち消えている。
冷や汗で汗ばんだ顔で、桜河がうっすらと目を開いた。花緒の頬に添えられた手に少しだけ力を込める。
「……花緒、ありがとう。おまえが、助けてくれたのだな」
「……桜河様っ。よかった……っ」
まだ弱々しいけれど、彼の微笑みを目に入れた途端、精いっぱい気を張って堰き止めていた涙が花緒の両目から溢れた。止めどなく落ちる涙は、桜河の着物にはらはらと落ちる。
花緒の泣き顔を目に入れた桜河は、彼女の手をそっと引いて自分の胸の上に抱き寄せる。触れ合った身体から伝わってくる彼の温かな体温――。
それが、彼が無事である証であり、自分の手で彼を救えたのだと伝えていた。
彼の腕の中の温かさと、知っている香りに緊張が解れていく。
慣れない癒しの力を使ったからか、花緒の身体に一気に疲労が込み上げてくる。
(……桜河様、大好きです……)
落ちてくる瞼に抗えないまま、花緒は気を失ってしまった。
(あなたも力を貸してくれるの?)
桜の花弁は眩い光を放ちながら、桜流しの中をただひとつ、ふわりふわりと昇っていく。やがてその光に共鳴するように床に落ちていた花弁たちが舞い上がり、光を放ちながら桜河の周りに集まり始めた。
天に立ち昇っていく桜の嵐。それは桜河に纏わりついていた毒気を清め、流していく。それと同時に、周囲の蔓延していた黒い靄をも祓い、蘇らせていった。
山吹が呆然と舞い上がる桜の花びらを見上げる。
「……贄姫の浄化の力か。けれど、これまでの贄たちは蛇門の毒気を祓えても、毒に侵された狂妖を救うことはできなかった。桜河のように狂妖へと堕ちかけた者も同じだ。救う術は存在しなかった。――けれど、今のこれは違う。浄化の異能とはまったく別の妖力の流れを感じる。こんな力を見るのは初めてだ……」
「……キレイだナ。温かくて、ほっとする。これが花緒の力なんだナ」
「本当に。俺たちはたった今、歴代最強の贄姫の誕生を目の当たりにしたんだね」
山吹が、心底ほっとしたように、いたずらっぽく花緒に笑いかける。
山吹の緊張の解けた様子を見て、花緒は自分の浄化が上手くいったのだとわかった。桜河の窮地を救えたのだと悟った。
次第に桜の嵐は収まり、部屋に静寂が訪れる。
花緒は、桜河の手を頬に添えたまま、彼の無事を確かめる。桜河の顔色が血の気を取り戻していた。彼の体を侵食していた毒気を立ち消えている。
冷や汗で汗ばんだ顔で、桜河がうっすらと目を開いた。花緒の頬に添えられた手に少しだけ力を込める。
「……花緒、ありがとう。おまえが、助けてくれたのだな」
「……桜河様っ。よかった……っ」
まだ弱々しいけれど、彼の微笑みを目に入れた途端、精いっぱい気を張って堰き止めていた涙が花緒の両目から溢れた。止めどなく落ちる涙は、桜河の着物にはらはらと落ちる。
花緒の泣き顔を目に入れた桜河は、彼女の手をそっと引いて自分の胸の上に抱き寄せる。触れ合った身体から伝わってくる彼の温かな体温――。
それが、彼が無事である証であり、自分の手で彼を救えたのだと伝えていた。
彼の腕の中の温かさと、知っている香りに緊張が解れていく。
慣れない癒しの力を使ったからか、花緒の身体に一気に疲労が込み上げてくる。
(……桜河様、大好きです……)
落ちてくる瞼に抗えないまま、花緒は気を失ってしまった。
