けれど同時に、ようやく自分の気持ちの正体――桜河への想いに気づくのだ。
桜河が誰を思ってきたとしても、その過去ごと受け止めたい。今はただ、自分の心を恥じることなく彼を想い続けたい――花緒はそう静かに決意する。
(……山吹さんに聞いてみてもいいのだろうか)
桜河の前にも贄がいたのなら、桜影の代から仕えている山吹なら知っているはずだ。とはいえ、本人ではなく他人の口から聞くのは、どこか後ろめたい。桜河の信頼を損ねたくはなかった。
それでも、胸の中の靄(もや)が晴れない。知りたい――その想いが抑えきれず、花緒は唇を開いたり閉じたりして迷った。
「花緒ちゃん。声に出さなきゃ、伝わらないよ」
山吹の言葉に背を押され、花緒は小さく頷く。
「……桜河様には、以前にも贄の方がいらしたんでしょうか?」
「どうしてそう思うの?」
「以前〝もう二度と贄を失いたくはない〟とおっしゃっていたからです。あの言葉の奥には、過去に何かあったのではと……」
山吹は少し考えたあと、静かに言った。
「それはおれが話すことじゃない。気になるのなら、桜河に直接聞いてごらん。話したいことがあるなら、君から声をかけるみるべきじゃないかな」
「……はい。桜河様に、お時間をお願いしてみます」
〝声に出さなきゃ伝わらない〟――その言葉が花緒の胸に残った。恐れを抱えたまま想いを閉じ込めても、真実には触れられない。もし桜河にかつて大切な人がいたとしても、それを知ってなお想い続けたい。
それが、温かく支えてくれた彼に対する自分の誠意だ。
山吹は微笑み、軽く頷く。
「大丈夫。桜河は、きっときちんと向き合ってくれる。いい結果になるといいね」
「ありがとうございます。頑張ります!」
山吹に励まされ、花緒は前を向いた。
(折を見て、桜河様にお時間をいただこう。何を聞いても、私はこの想いを大切にすると決めたのだから)
そう心に誓いながら、涼やかな風を胸いっぱいに吸い込んだ。
桜河が誰を思ってきたとしても、その過去ごと受け止めたい。今はただ、自分の心を恥じることなく彼を想い続けたい――花緒はそう静かに決意する。
(……山吹さんに聞いてみてもいいのだろうか)
桜河の前にも贄がいたのなら、桜影の代から仕えている山吹なら知っているはずだ。とはいえ、本人ではなく他人の口から聞くのは、どこか後ろめたい。桜河の信頼を損ねたくはなかった。
それでも、胸の中の靄(もや)が晴れない。知りたい――その想いが抑えきれず、花緒は唇を開いたり閉じたりして迷った。
「花緒ちゃん。声に出さなきゃ、伝わらないよ」
山吹の言葉に背を押され、花緒は小さく頷く。
「……桜河様には、以前にも贄の方がいらしたんでしょうか?」
「どうしてそう思うの?」
「以前〝もう二度と贄を失いたくはない〟とおっしゃっていたからです。あの言葉の奥には、過去に何かあったのではと……」
山吹は少し考えたあと、静かに言った。
「それはおれが話すことじゃない。気になるのなら、桜河に直接聞いてごらん。話したいことがあるなら、君から声をかけるみるべきじゃないかな」
「……はい。桜河様に、お時間をお願いしてみます」
〝声に出さなきゃ伝わらない〟――その言葉が花緒の胸に残った。恐れを抱えたまま想いを閉じ込めても、真実には触れられない。もし桜河にかつて大切な人がいたとしても、それを知ってなお想い続けたい。
それが、温かく支えてくれた彼に対する自分の誠意だ。
山吹は微笑み、軽く頷く。
「大丈夫。桜河は、きっときちんと向き合ってくれる。いい結果になるといいね」
「ありがとうございます。頑張ります!」
山吹に励まされ、花緒は前を向いた。
(折を見て、桜河様にお時間をいただこう。何を聞いても、私はこの想いを大切にすると決めたのだから)
そう心に誓いながら、涼やかな風を胸いっぱいに吸い込んだ。
