黒蛇様と契りの贄姫

 まったくそのとおりでございます、と花緒は項垂れる。

 おそらく大量の書物が保管されている蔵には、素人の自分が必要な文献を探し出すのは至難の業だろう。

(正直、桜河様が同行してくださるのはありがたい……)

 ここは桜河の言葉に甘えることにして、花緒と彼は屋敷の離れにある書庫の蔵へと向かった。二人でやって来た離れの土蔵の前で、桜河は大きな鉄製の鍵を錠前に差し込む。厚い外戸を開くと、その奥にはさらに二重扉が備えられていた。さすがは妖の王が管理する書庫だけあって、重要文書も多く、厳重な防備が施されているのだろう。

 桜河は閂を外して二重扉の引き戸を開け、振り返って蔵の前で待つ花緒を見た。

 そして「来い」とでも言うように、穏やかに手を招いた。

 それに応えて、花緒は遠慮がちに蔵に足を踏み入れる。薄暗い内部は、土埃と黴臭さが鼻を突いた。壁際には漆塗りの本箱や、杉の長持が整然と積まれている。長く放ったらしにしているのではなく、きちんと手入れされていた。定期的に虫干しもしているのだろう。くぐもった空気の中にも、からりとしたお日様の匂いが感じられる。