思い立ったが吉日。花緒は小走りで、この時間に桜河が居そうな場所――ひとまず彼の私室に足を運んでみる。
もうすっかりと配置を覚えた廊下を淀みなく歩き、奥座敷にある部屋に辿り着いた花緒は、襖の前で畳に指を付いた。
「桜河様。花緒でございます。お願いがあって参りました」
「花緒か。入ってくれ」
桜河は在室だったらしく、彼の返事がある。花緒が襖を開けると、桜河は文机に腰かけて何か書き物をしていたようだった。
――『きょうび、忙しなく方々頭下げて回ってはるのをよう見るようになったんどすえ。あんさんがここに来て苦労せんように』。
ふと、先日聞いたお蓮の言葉が脳裏をよぎる。確証はないけれど、もしも桜河の書き仕事が自分に関する物事なのだとしたら……自分は、己のあずかり知らないところで彼にとても世話になっているのだろう。
もうすっかりと配置を覚えた廊下を淀みなく歩き、奥座敷にある部屋に辿り着いた花緒は、襖の前で畳に指を付いた。
「桜河様。花緒でございます。お願いがあって参りました」
「花緒か。入ってくれ」
桜河は在室だったらしく、彼の返事がある。花緒が襖を開けると、桜河は文机に腰かけて何か書き物をしていたようだった。
――『きょうび、忙しなく方々頭下げて回ってはるのをよう見るようになったんどすえ。あんさんがここに来て苦労せんように』。
ふと、先日聞いたお蓮の言葉が脳裏をよぎる。確証はないけれど、もしも桜河の書き仕事が自分に関する物事なのだとしたら……自分は、己のあずかり知らないところで彼にとても世話になっているのだろう。
