黒蛇様と契りの贄姫

 しかも桜河の妖力は他に類を見ないくらいに強大。それを行おうというのだから、一日で何かできるようになるほうが傲慢だったのかもしれない。

 それでもがっかりした気持ちが隠し切れない花緒に、山吹が困ったように笑った。

「……そんなに残念がらなくても大丈夫。特訓初日に不測の事態が起きなかっただけでも上出来だ。何か掴めたものはあった?」

「はい。目を閉じた時に、桜の花びらのようなものが視えました。掴もうとしたら消えてしまったのですが……」

「そう。桜の花びら、か。その感覚を忘れないようにしてね。――さ、今日のところはここまでにしよう。急いては事を仕損じる。続きは明日」

「承知いたしました。ご指導ありがとうございます。師匠」

 空を見上げると、そろそろ日が傾き始めている。夕刻が近いのだろう。

 花緒は山吹と共に、山を下りて屋敷へと帰路に着いた。