未だに胸もとに入れて持ち歩いている、現世から持参した桜の花びら。その花びらの姿形が、自分の中にある妖力のそれと重なる。ずっと自分のそばにあり、守ってくれているもの。そこが共通している気がして。
その感覚を掴もうとしたけれど――視えていた桜の花びらがぼんやりと霞んだ。
(待って……!)
消えゆく花びらに向かって手を伸ばしてみたけれど、虚しく空を掴むだけだった。花びらは花緒の指先から逃れて跡形もなく消えてしまう。それと同時に、自分の内に集中していた視界が外に押し出された。元いた山頂の景色が戻って来る。
……何も起こらなかったのだ。
(そんなに上手くはいかないよね……)
山吹の話では、妖力操作を自然にではなく故意に会得する所業は、身の危険を伴うくらいに何が起こるかわからないらしい。
その感覚を掴もうとしたけれど――視えていた桜の花びらがぼんやりと霞んだ。
(待って……!)
消えゆく花びらに向かって手を伸ばしてみたけれど、虚しく空を掴むだけだった。花びらは花緒の指先から逃れて跡形もなく消えてしまう。それと同時に、自分の内に集中していた視界が外に押し出された。元いた山頂の景色が戻って来る。
……何も起こらなかったのだ。
(そんなに上手くはいかないよね……)
山吹の話では、妖力操作を自然にではなく故意に会得する所業は、身の危険を伴うくらいに何が起こるかわからないらしい。
