黒蛇様と契りの贄姫

「承知いたしました。やってみます」

 花緒は静かに瞼を閉じる。視界を覆う真っ暗闇。山頂の風が花々を揺らす音、鳥たちのさえずりが鮮明に耳に届くようになる。

(私の中に流れる桜河様の妖力。桜河様からの贈り物……)

 大切なものに触れるかのように、花緒は自分の胸に片手を当てる。桜河を意識すると、自分の内にある温かなものの存在を感じた。それは確かに自分の中に宿っていて、まるで自分を守るかのように全身を巡っている。これが自分の妖力――なのだろうか。

 山吹が目を細める。

「花緒ちゃん。その妖力を自分に合う形で具現化してみて」

(自分に合う形……。これは桜河様から授かった力。桜河様を表すものといえば――)

 目を閉じたままの真っ暗な視界に、桜の花びらが一枚舞い降りる。それは漆黒の湖面に落ち、緩やかな波紋を描いた。

 ――そうだ。桜河様の妖力と言えば桜。