黒蛇様と契りの贄姫

「……桜河はんなぁ。これまでずっと、なんでもおひとりで抱えてきゃはったんえ。いつもむつかしいお顔して、誰にも弱みを見せんと……歴代最強の妖の王でいてはるけど、戴冠したんは百二十歳の時やさかい、ほんまはもっと周りの大人に頼りたかったやろうに……」

 ぽちゃん、と鯉が跳ねる。お蓮は遠くを見るように目を細める。

「〝最強の王〟っちゅう言葉はな、文字通り桜河はんが〝最強〟やって民に知らしめると同時に、桜河はんが人に頼れへんくなってもうた呪いの足枷でもあんねん」

 お蓮の言葉にはっとする。

 〝歴代最強の妖の王〟。多くの人々が口にするその言葉が、桜河にとってどんな意味をもつのか、これまで考えなかった。

 桜河が戴冠したのが百二十歳だとすると、現世で換算して十二歳だった頃になる。まだまだ周囲の大人たちに守られるべき少年だ。

(そんな年頃で国の一番上に立ち、民を守らなければならない立場に立たされた彼は、いったいどれだけの責任を背負ってきたのだろう)

 桜河の肩に乗っているものの重さにやっと気づく。