黒蛇様と契りの贄姫

(好き……。私が、桜河様を……?)

 これが恋い慕うという気持ちなのだろうか。四六時中、彼のことが気になったり、彼の一挙一動に振り回されてしまったり。

 そして、彼に自分を見てほしいと願ってしまう――。

「――っ」

 恋を自覚したからだろうか。花緒は居たたまれなくなってその場にうずくまる。お蓮が腰を屈め、そんな花緒の肩に優しく手を置いた。

「そないに恥ずかしがらんでもええのに。あんさんに想うてもろて、桜河はんは幸せもんやなぁ」

 お蓮はにっこりと人好きのする笑みを浮かべると、足もとに広がる池へと視線を外す。橋の下では二匹の鯉が戯れている。離れては近づき、近づいては離れて。ゆらゆらと泳ぐ黒と白を見つめながら、お蓮はぽつりぽつりと話し始めた。