黒蛇様と契りの贄姫

「え? えっと、はい! いえ、あ……こいって、鯉のことか、あぁ……」

「あんさん、大丈夫? 良かったら少しお話しよか」

「は、はい。もちろんです」

 お蓮は優雅な仕草で花緒の隣に並ぶと、そっと欄干にしなやかな手を置いた。

 先ほどは聞き間違いだったけれど、悶々と絡まった思考の中に飛び込んできた〝恋〟という単語。その言葉に突如雷に打たれたような衝撃を受け、花緒の心臓がばくばくと早鐘を打っていた。

「なんやぎょうさん溜め息ついてはったけど、そないに思いつめんと。お顔がしおしおになってまうで」

「し……しおしお……」

「桜河はんやろ?」

 お蓮の的確な指摘に、花緒はぎくりと固まる。

「な、なんでそう思われるのですか……!」