黒蛇様と契りの贄姫

 花緒の瞳が真っ直ぐに桜河を射抜く。

「どれほど大変でも構いません。本当に危険な時は止めてください。それでもいま、私にできる役目があるなら……やらせてください!」

 桜河は息を呑んだ。その言葉の奥に宿る彼女の決意に、何も返せなくなる。

 掌の奥で、握りしめた拳が静かに震えていた。

 花緒は、三つ指を揃えて、深々と頭を下げる。自分の声だけが響き、場内は静まり返る。誰からも身じろぎの音がひとつもしない。

 花緒は畳と向き合ったまま、勇んでいた心が萎んでくる。

(思えばこれまで、こんなに自分の意思を主張しなかったかもしれない)

 常に周りの顔色を窺いながら生きてきたのだ。そんな自分が初めて見せた意思。彼らは何を感じるのだろうか。