黒蛇様と契りの贄姫

 大池に映し出されていた少女の現世での記憶。それが、自分が泉水家で虐げられていた記憶を呼び起こしてしまった。花緒の現世での扱いを承知している桜河が、花緒に気づかわし気な視線を向ける。

 与太郎が案じるように続ける。

「今回はそれが原因だったようですね。贄姫様の妖力で鈴の暴走を制御できない場合、鈴は妖力の代わりに贄姫様自身の生命力を源として制御しようとします。代償として贄姫様は体力を激しく消耗する。ですから贄姫様は、儀式を完遂する間際に気を失われた」

「そうだったのですね……。お神楽を立て直した後、神楽鈴に体力を分け与えている感覚がありました。それは鈴が、私の体力を使って足りない妖力を補っていてくれていたからだったのですね」

 花緒は改めて、今は持ち合わせていない神楽鈴に感謝する。鈴は、何としても儀式を成功させたいとする花緒の願いに応えてくれたのだ。そうして無事に毒気を浄化し、負担を掛けたとはいえ花緒が無事でいられる方法を取ってくれた。