返却期限のある人生

 そのとき、結衣のスマホが震えた。
 テーブルの上で小さく跳ねた画面を、結衣はしばらく見つめる。

 通知は地図アプリだった。

 〈人生返却センターまでの道順〉

 見たことのない名前。住所も知らない。
 けれど不思議と、そこがどこにあるのか分かってしまった。

 コートを羽織り、玄関のドアを開ける。
 夜の空気が頬を刺すのに、足は迷わない。

 人生は、返却できる。
 その意味を、まだ知らないまま、結衣は歩き出した。