「佐々木くん」
十五分ぐらい経った頃、お待たせと小走りで柊はやってきた。
黒のパーカーにスウェットというラフな格好なのに、整った顔は何でも一級品に見せてくるから不思議だ。
「はは、ちゃんといた」
「待ってろって言っただろ。お疲れ」
ありがとう、と柊は俺の右隣に座った。
「これ、カフェオレとレモンティーどっちが好きだ?」
さっき買ったばかりのものを袋から出して柊に見せる。
「あ、これさっき買ってくれたやつじゃん。いいの?」
「好きじゃなかったらごめん」
「じゃあこっち。俺めっちゃ好きなんだよね。ありがと」
そう言ってレモンティーを手に取った柊は、ふわっと優しく笑った。いただきます、と言うのでどーぞとだけ言って俺もカフェオレを口に含む。
柊が隣でうまっと言っているのが聞こえる。この距離にいるのはどうも変な感じだ。
「佐々木くんさ」
「凌太でいい」
「あぁほんと?じゃあ、俺のことも蓮也でいいから」
「わかった」
「じゃあ凌太、LIME教えてよ」
「急だな」
あまりにも突然連絡先を聞いてくる蓮也に、思わず笑ってしまった。
「なんか笑った顔ちゃんと見たの初めてかも」
「うっせ」
「凌太、意外と口悪いよね」
俺の口が悪いのが意外だったようで、笑っている蓮也に俺もつられて笑う。
そっちこそよく笑うんだな、なんて絶対に口にはしないけど。
「くま太、飾った?」
「めちゃめちゃ大事に飾ってる」
「それはよかった。俺の待ち受けくま太」
そう言って自慢げにスマホの画面を見せてくる。
いつもは陽キャ集団の中でもクールなイメージの蓮也が、待ち受けはキャラクターなんて意外だ。しかもくま太。
俺もスマホを出して、無言で待ち受けを見せる。
「おおっ、お揃いじゃん」
同じなのは偶然だけど、それがよほど面白いのかまた隣でケラケラと笑っている。ツボが浅いのも意外だ。
「LIMEのQR出して」
「お、交換してくれんのね」
ニコニコで男の俺と連絡先を交換している蓮也に、次は俺がツボってしまった。
「凌太めっちゃ笑うじゃん」とニヤニヤしている隣のイケメンは、俺がいつも学校で見るイケメンと少し違って見えた。
「俺らこれからダチだね」
耳馴染みのいい低音で、イケメンからそう言われれば女の子はたまったもんじゃねぇだろうな。
俺も何だか照れ臭くて、おう、とだけ返事をした。
それからくまライフの好きなシーンを語って、また学校でと解散した。
チャリを爆速で漕いで帰宅し、遅いと姉貴にキレられたけど不思議と悪い気はしなかった。
通知音が鳴りスマホを手にすると、くま太のアイコンと、よろしくと告げるくま太のスタンプが表示されていた。
「なんだよ」
LIMEを開いて俺も同じスタンプと、飾ってあったくま太のぬいぐるみの写真を送った。
