月曜日、付き合って初めての登校日だ。
教室についたもののなんだか落ち着かない。
蓮也よりも先に俺の前に現れたのは「おっはー」と入ってきた井上だ。
井上にも報告しておかなければならない。
「井上、あの子と付き合うことになった。色々ありがと」
それだけ報告すると、みるみるうちに井上の目がでかくなっていく。
井上のこう言うところが面白くて昔から好きだ。
「まじか!!おめでと!!恋のキューピッド侑ちゃんって呼んでくれてもいいのよ」
「呼ばないしキューピッドって見た目じゃねぇよ」
誰かムキムキバスケ部男をキューピッドって呼ぶんだよ。
でも感謝はしているし、無言でグータッチを交わしておいた。
「そういえば、相手って同じ学校?」
そうだよな、相手が誰かってそりゃ気になるよな。
蓮也に許可も取らずに言っていいもんかわからず悩んでいると、右側にふっと影が現れる。
「凌太の恋人の柊蓮也って言います。井上くんよろしく」
「蓮也!?」
「なるほど柊くんか。お前こんなイケメンを惚れさせるなんてなかなかやるな」
突然現れて恋人宣言する蓮也にびっくりするし、それをノリノリで受け止めている井上もちょっと怖い。
「井上くんがミーティングの時でいいからさ、凌太連れてってもいい?」
「どうぞどうぞ。なんなら今日もミーティングなのでぜひ」
「ほんと?あんがと」
俺が突っ込む間も無くあれよあれよと話が進んでいる。
「ってことでおはよ凌太。今日はお昼一緒に食べよう。あいつらにも話してあるから」
「う……お、あ、うん」
「なにそれ」
俺が噛むといっつも爆笑されるからもう恥ずかしいとかなくなってきた気がする。
井上もうんうんと頷いていて、正直井上は寛容すぎて器のデカさが違うなと思った。
あっという間に昼休みが来て、俺は蓮也と屋上へ向かう。
そこには既に須藤に桧山、小早川が揃っていた。
ここに来るのも三回目だ。今日はやけに晴れていてこれまた昼寝できそうな気持ちのいい空だ。
三人の前に着いた途端、蓮也は俺の左腕に絡んでくる。
「えー、俺たち柊蓮也と佐々木凌太は、テストが終わった金曜日に無事ラブラブカップルになりましたので報告しまーす」
「は?何言って」
「おめでとうなぁほんまに」
「一時はどうなることかと」
「いやぁ良かった良かった」
当たり前に祝福ムード全開でちょっとどうしていいか分からない。嬉しいことなんだけど。
「あ、そう言えば俺思ったんだけどさ」
俺には蓮也にどうしても聞きたいことがまだあったことを思い出した。
「須藤たちの前でなんで俺の事わざわざ苗字で呼んでたんだ?」
それを聞くと何故か須藤に右肩を叩かれ、小早川に頭をポンポンされ、桧山に握手された。なんだこれは。
「それはさ、俺だけが凌太って呼びたかったから」
「どういうこと?」
意味がわからない。それてなんで自分で苗字で呼ぶんだ?
「俺が名前で呼んだら、こいつらも凌太って呼ぶかもしんないし」
「じゃあ学校で話さないようにしてたのは?」
「凌太が目立ってモテたら嫌だから」
その答えを聞いて、俺は蓮也以外の三人の顔を見る。
三人とも黙って頷くだけで何も言ってくれない。
どうやら蓮也の重さってのは相当なものらしい。
そう考えると、急に右腕が三倍ぐらいの重さに感じた。溜息をつきそうになるけどこれも宿命なのか。
「はい、誓いのチューね」
そう言っていきなり三人の前でキスされた俺は、恥ずかしさで訳が分からなくなって、付き合ってそうそう彼氏の頬にビンタしてしまった。
「手懐けられるのは佐々木くんだけかもしれないな……」
そんな桧山の声が聞こえたけど、当の本人はあっけらかんとしている。
「ごめんね」
それで許してしまう俺ももうきっと手遅れなんだろう。
熱を冷ましたくて「俺が購買行ってくるから」と屋上を後にする。
ついてこようとした蓮也は、須藤に止めてもらった。
あっつい。購買に向かうと、偶然にも林の姿を見つけた。
「林もパン?」
「凌太先輩!!はい、パン買いに来てます」
「俺も友達の分も含めて買いに来た」
「そうなんですね。……あの凌太先輩」
二人で購買の列に並んでいると、珍しくおずおずと名前を呼んでくる林。
「どうしたんだよ」
「あの、スパイク選ぶの着いてきてもらえたりしますか?」
しおらしいからまたサッカーやろうだの、試合出ろだの断ってしまいそうなやつかと思ったけど、そんなことなら何も問題は無い。
「あーそんなこと?全然いいけど、いつ?」
「明日部活休みなんで、明日の放課後とかどうですか」
「いいよ。明日校門で待ち合わせしようぜ」
「ありがとうございます!楽しみにしてます!」
浮き足立っている林がなんだか可愛くて、中学の部活を思い出した。林と一緒に並んでいるうちに順番が回ってきて、お互いパンを買って解散した。
何が好きか聞くのを忘れたので、前に食べていたパンをテキトーに見繕って屋上に戻る。
「おかえりー」
「佐々木くんありがとうなー」
出迎えられてパンを受け取ってもらう。
「変な人に絡まれなかったか?」
「変な人には絡まれてないけど、林に会った」
それを聞くと、蓮也の目の色が変わったのがわかった。
「あの後輩?」
「あー、そうそう。スパイク一緒に見てほしいらしくてさ、明日一緒に行ってくることになった」
それを伝えた瞬間、蓮也が俺を睨んできた。
これなんかまずかったか?
「それ、デートじゃないの」
「いやデートじゃなくて後輩のスパイク選ぶだけだって」
「だからそれがデートじゃん」
「違うって」
そう言うと「もういい」と拗ねて屋上から出ていってしまった。取り残された俺は、三人の顔を見る。
「あんまり気にせんくていいで」
「そのうち機嫌直るよ」
「それよりパン早く食べよう」
本当にほっといていいのか分からないけど、逆に何話せばいいのか分からない俺はとりあえず三人とパンを食べることにした。
さっきまでの空気とは違って、俺は動揺を隠せなかった。いきなり喧嘩してしまった。
