保護猫おもちの縁結びやさん

「ジュジュ……」

 ん。なんだこの匂いは。美味そうな匂いだ……。

 綾人は瞬きをしながら目を開いた。物音はキッチンのほうから聞こえるらしい。部屋の扉を開けると、さらに香ばしい香りが鼻をついた。綾人の腹がぎゅるりと鳴る。

 キッチンに不審者が立ち、フライパンを無心に振っている光景。

 を見た綾人は、軽く目眩がした。

 そうだな。昨日の夜、俺確かに保護したよな。《《子猫》》のほうを。この不審者はオマケだったよな。

 子猫はどこかと探してみれば、ツイード柄のソファの上で、うたた寝をしている。今日は仕事は休みだし、近所の動物病院に連れていこう。健康チェックをしてもらって、病気がないか確認しよう。

 白子猫への対処はすぐに浮かんだ。しかし、この保護されたがり人への対処はすぐには思いつかなさそうだった。

「あっ、おはよお」

 フライパンを振る手は止めずに、不審者が綾人に声をかけた。首を後ろに向けて、綾人を見る。この不審者、器用だな。

「おはよう……なにしてんの? 人ん家のキッチン勝手に借りて」

 後ろのほうは半ば嫌味だ。

「なにしてんのって、そりゃモーニングを作ってるんだよ。俺もおにいさんも、ねこたんも腹ぺこだろお」

「子猫のほうは大丈夫だ。こんな日が来る可能性を考えて、子猫と成猫の餌をストックしてある。起きたら後でミルクを飲ませよう」

 「そっかーよかった」と、不審者は笑うと、火を止めてフライパンの中身を丸皿2枚に分けて入れた。

「はーい。できたよう。たべよー」

 子猫の眠るソファの前に、不審者と俺が対面して座る。おい。何でお前がソファの上で、俺が床にクッション置いて座るんだよ。

「はい。いただきます!」

「い、いただきます」

「はい。おたべー」

 男の掴みどころのない空気感に押されて、スプーンを手に取る。そのまま男の作ったチャーハンを口に含んだ。う、おいしい。町中華並みの美味しさだ。空腹のあまり、がつがつと食らいついていると、男は満足そうに笑みを浮かべながら綾人を見つめる。カラコンが入っているのか、少し目の光が多く反射する。世に言うちゅるんカラコンというやつらしい。

「ごちそうさま……」

「はーい」

 綾人は食べ終えた食器を手に取り、キッチンで洗い物を始める。男は自身の皿のチャーハンを完食すると、スマホを触りだして、無音カメラで白い子猫の寝顔の写真を撮っている。

 何してるんだ、こいつ。

 こんなの、いつもの俺のモーニングルーティーンじゃない。

 綾人のモーニングルーティーンは、いつも決まった時間に目を覚まし、コーヒーを飲みつつ、ネットでウェブ新聞を見ながら冷蔵庫に作り置きしてあるサラダチキンを食べる、という流れだ。食後は歯磨きをして、軽く筋トレ。そのあと、朝散歩に出る。

 だが今日は、そんな穏やかな一日を送れそうにない。