罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

車の中で、珍しく静かな悠人を見つめていた。
いつもなら学校のこととか気にかけるようなことを言うのに。
まあ、僕には興味ないか。
そう思っていると、ふと悠人は言った。

「今日は本当に生徒会の仕事をしていたのですか?」

「…どうしてそんなこと聞くの?」

疑ってるんだろなってことは、電話した時にわかってた。
うまく嘘をついてもなぜか悠人には気がつかれてしまう。
幼馴染だから…なのかな。

「いえ。ただ気になっただけです」

「そう…。まあ、生徒会の仕事は事実だよ。先生に資料を配るように頼まれてね」

「そうだったのですね。お疲れ様です」


そんなてきとうに返事しなくてもいいよ。


そう言いたかったけど、僕は何も言わなかった。
悠人にはずっと助けを求めてきた。
でも、あの日僕は悠人のことがわからなくなってしまった。
僕に優しくするのも一緒にいるのも、悠人の意思ではないんじゃないかってね。

「本日は来客の予定もありませんのでゆっくりしてください。明日は卯月様が来ますから、遅れないよう準備もお願いしますね」

「ああ、わかってるよ」

そんなそっけない返事をして、外の景色へと視線を移した。
永遠に終わることのない地獄で僕は生きるしかない。


そう思ったら、景色の色も全て消えてしまった。



***

その夜、夕食を食べて寝る支度をしていた時突然ドアがノックされた。

「誰?」

そう呼びかけると、返ってきたのは悠人の声。

「突然申し訳ございません。蒼唯様にお会いしたいという方がいまして、お部屋に通してもよろしいでしょうか」

この時間に来客とは変な話だ。
それに、父親が何も言ってこないとは。
何か重要なことに違いないと思った。

「いいよ。今すぐ通して」

それ以外の選択肢がないと思った僕は、すぐに返事をして来客者を部屋に入れた。
ドアがゆっくりと開かれて、入ってくる人物を見た。
悠人の後ろにいる男はよく見覚えがあった。
よく目立つ金髪に、あまり雰囲気に合わないスーツを着ているのは。

間違えなく月海くんだった。

「月海くん…?」

「やっほー鷹栖。突然ごめんな」

ここに来たのが当たり前みたいな態度に、僕は驚いて固まってしまった。
それと同時に、なぜ彼がここに来たのかという疑問が生まれる。

「えっと…天王さんでしたよね?少しふたりで話させてくれませんか?」

月海くんはニコリとしてから、悠人にそう頼んだ。
それから、悠人は頷いて部屋を出て行った。

「それで…話っていうのは?」

少し冷静さを取り戻して、僕はイスに座った。
それから、月海くんはゆっくりと真剣な顔でこう言った。

「勝手なことをしたことは謝るよ。俺………鷹栖を買ったんだ」

その言葉を聞いた瞬間、僕の心臓はドクンと大きく音を立てた。

「鷹栖家を支持する代わりに、鷹栖を俺の家に住ませたいって。理由はまあ、仕事の手伝いとか適当に言っといたけど。俺は鷹栖に幸せになってもらいたいんだ。…鷹栖は、ここにいて幸せ?」

「僕…は、幸せになっていい人間じゃない。僕はこの家に罪の子として生まれたんだ。幸せになっていいわけがない」

ずっと自分に言い聞かせてきた言葉。
でも、胸がいまだに苦しい。

「鷹栖はここにいる限りそう考える。だから、俺をもっと頼ってって言っただろ?だから、俺と一緒に来て」

どうしてか、この時僕は迷わず彼の手をとってしまった。
だからもう、僕は手遅れだったんだ。
彼に出会った時点で、彼に惹かれた時点で、彼に恋をした時点で。


全部手遅れだった。