罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

俺は目の前を歩く男、鷹栖の幼馴染の卯月にただ着いていくだけだった。
連れてこられたのは人通りの少ない、裏庭の橋の上。
卯月は立ち止まって川を見た。
それから、ゆっくりと口を開く。

「月海くんと蒼唯ってどんな関係なの?」

「どんな関係…って、ただの友達だよ」

その言葉は、自分自身を苦しめる。
本当は鷹栖のことは恋愛対象として見ていて、本当に大切な人なんだ。
そんな俺の気持ちを見透かしたように卯月が言う。

「それで通用すると思ってるの?“ただの友達”なら、蒼唯を大金で買うなんてことしないでしょ」

「…知ってて聞いたのか」

俺のその言葉に、バカにするようにふっと笑う。

「当たり前でしょ。蒼唯のことならなんでも知ってる」

それから、卯月は俺に近づいて怒ったように言う。

「俺は何年の前から蒼唯のことが好きで一緒にいるんだ。君みたいなぽっと出に負けるわけないんだ!」

こいつは、本当に鷹栖のことが好きなんだと思った。
そのくらい必死なんだ。
たしかに俺は鷹栖と過ごした日数もそんなにない。


けど、好きって気持ちは誰にも負けない。


「そんなの知らない。俺は俺のやりたいように鷹栖に好きってアピールするから。卯月なんかしらねぇ」

これだけは負けたくない。
鷹栖に好きになってもらえるようにしたいから。

「っ…!そうかよ…。でも、蒼唯は月海くんのせいで傷ついてる」

「え…?俺の…せい?」

そんなの知らない。

「蒼唯はなにかあると全部自分のせいだと思い込んじゃうから。月海くんに対して申し訳ないと思ってるはずだし、俺達がこうやって喋ってることにも自分に非があると思ってるだろうな」

「そう…なのか?」

知らなかった。
鷹栖はそんなふうに悩んでいるのか。
確かに時折悲しそうにする時はある。
口癖のようにごめんと謝ってくる。

「蒼唯は、幸せになることを恐れてる。それでなにかあったら自分のせいだからって、よく言ってたからな」

幼い頃の鷹栖のことも、鷹栖の思いも全部卯月は知ってるんだ。
そう思ったら…やっぱり嫉妬する。

「なら、俺が幸せに慣れさせる。卯月にはできなかったみたいだからな」

わざと(あお)るように言ってしまった。

「そうかよ。まあ、月海くんにはできないと思うけどね?」

俺はその言葉は聞かず、もときた道を戻っていった。
鮮やかに彩られる紅葉が、今はとても苦しい色に見えてしまった。

***

「鷹栖、戻ったよ」

部屋に戻ってきたけど、鷹栖の姿が見つからない。
もしかしたら寝てるのかも。
そう思って、奥の部屋を見にいった。
すると案の定、スヤスヤと眠る鷹栖がいた。

「おーい。戻ってきたぞ」

軽くゆすってみても起きない。
眠っているのをいいことに、俺は鷹栖の髪に触れた。
そして、俺は鷹栖の顔に涙のあとがあるのを見つけた。

「鷹栖…泣いてたのか?」

そう聞いても、返事が返ってくることはない。
俺の知らないところで、なにを思って泣いていたのか俺にはわからない。
そう思ったら、また胸がキュッと苦しくなった。


どうやったら、俺は君の特別になれるだろうか。