この涙は声となり、君に「好き」を伝える。

思えば小さい頃から私だけ異常だった。
他の子は転んだり、願いが叶わなかったりすると泣き始める。
でも私はそれらを素直に受け入れて生活していた。転んでも痛いのを我慢すれば褒めてくれるかもしれない。願いが叶わなくて泣かなかったら褒めてくれるかもしれない。という小さな希望を頼りに。そうしているうちに感情をあまり出さないようになっていた。
母に、
なんで美優はそんな感情を面に出さないの?
と言われた記憶がある。
わからない
としか言えなかった。基本的に無感情、無表情だよねと言われていた。でも、感情がなかったかというとそういうわけではない。小学校三年生の頃、クラスで飼っていたハムスターが死んでしまったとき、悲しいなとは思った。でも顔に、涙として出ることはなかった。
多分私は感情はあるけど面に出すのが苦手なんだと思う。
それでも周りの子と違うのが嫌で、学校で泣いたことがある。とっても些細なことで。周りの人たちは私を慰めて、寄り添ってくれると思っていた。でも、周りの子達が私を見る目は違った。
冷たい、腫れ物扱いするようなそんな目だった。先生の目も、友達の目もみんな同じだった。
なんであんなことで泣くの?迷惑なんだけど?
あいつ弱虫じゃん
悪口を散々言われた。私はそれのせいでもっと涙を流してしまった。
結局、その日は学校にいることもできず、早退することになってしまった。
その後の生活でも度々無視されたり、陰口を言われたりすることが多くあった。でも、私は無表情だった。感情を面に出すのに抵抗を持つようになってしまった。
その3年後、小学校六年生のときだ。この抵抗は修学旅行の班決めの時でも発揮される。クラスの目立つ女の子が
「えぇー、笠野さんと同じ班なの…?嫌だな。笠野さんはどうなのよ!」
完全なる逆ギレだ。一緒になりたい子となれなかったからってそれを私にぶつけないでほしい。それに嫌だとはっきり言わないでほしい。イラっときつつも私もこの子とは一緒になりたくなかった。
「嫌だよ、私も」
無表情、無感情を徹底して伝える。すると、
「は⁉︎なんなのよ‼︎嫌だ?私も嫌だよ‼︎でも我慢してるの‼︎あんたのそういう無感情、無表情が嫌なの‼︎嫌いなの‼︎」
その子がわーわー騒ぎ出すもんだから
「無感情じゃないし、ひどいこと言われたら私だって悲しくなる。何勝手に無感情ってことにしてんの?」
というとその子は
「もういい‼︎」
と言っていってしまった。私は、友達にお願いして班を変えてもらうことになった。
無感情、無表情でも嫌われ、感情があっても嫌われる。どうしたらいいの?私はどう生きたらいいの?

☁︎☔︎
その後も私は、無表情、無感情だからと様々な人から嫌われづつけた。
母にさらに嫌われた出来事が一つある。
おばあちゃんのお葬式が中学2年生の時にあった。弟の敬也はわんわん泣き、母は悲しそうに目を潤ませている。でも、私は涙が出なかった。確かに、おばあちゃんが亡くなったのはとっても悲しかった。おばあちゃんは私のただ1人の味方だったからだ。
「美優、泣けないのはね、悪いことではないんだよ。泣けないならその気持ちを伝えるようになりなさい。泣けない分、たくさん笑う子になりなさい」
おばあちゃんは精一杯私を励まし続けてくれた。
でも、私はその期待に応えることができなかった。
そのお葬式の後、母に怒られた。
美優は悲しくないの?おばあちゃんが死んでもいいって思っているの?
と。
そんなこと思ったことはないし、勝手に勘違いしないで欲しかった。母に、
そんなこと、いつ言った?勝手に勘違いしないで。
と告げて、私は、自分の部屋に逃げるようにはいっていった。
下の階からは私を呼ぶ声が何度も聞こえてきたが、聞こえないふりをして、ベッドに倒れ込む。
そんなことがこの17年間の内に何回も起こった。過去に戻りたい、時間を止めてしまいたいと思っても、永遠と時間は進んでいく。
そして、去年、高校に入学した。
高校の名前は、日野坂高校。この辺では学力が結構高い学校だ。校舎はとっても綺麗で、椅子や机も誰も使っていないだろうというくらい綺麗だ。
でも、高校生活一年目は本当に大変だった。
これから話すことは去年の話。
入学し、まずはクラスでの自己紹介。お題は、好きなこと、努力していることだった。
私は
「笠野美優です。好きなことは特にありません。高校の定期テストで上位を取れるように努力しています。よろしくお願いします」
きっとこの自己紹介からダメだったのだろう。
誰も私に近づこうとしないし、話しかけようともしない。
入学式から1ヶ月。クラスの空気は決まりつつあった。クラスのリーダー的男の子と女の子がいる。いわゆる一軍というやつだろう。そういう子たちからしたら私は六軍くらいに思われているのだろう。
「えー‼︎綾乃そのネルチかわいい。今度どこで買ったか教えて?」
「いいよぉ!ねね?涼介はどう思う?」
「んー、可愛いんじゃね?」
「んー!だよね!ありがとう!」
弾んだ会話が聞こえてくる。このクラスの"一軍"の人たちだ。
このクラス一番のイケメン男子(多分)の川端涼介。
このクラス一番のかわいい女子(多分)の高梨綾乃。
そして綾乃の親友の矢伊那あかり。この3人はクラスの中でも目立っている。
正直言って反吐が出る。
ネイルの可愛いとかで盛り上がっているこのクラスに。この辺りでも頭のいい学校なのに、なんでこんなバカみたいなのがいるのだろう。
まあ、絶対に関わることはないし、私には関係ないのだが。
でも、ああいう子たちは些細なことで大泣きし、慰めてもらい、調子に乗っていく。
泣かせる側にならないように気をつけないとと自分にいう。
今、私には友達がいないし、1人で本を読むことが趣味となっている。あとは、たまに音楽の歌詞を書くことくらい。つまり、暇なのだ。でも定期テストの前には人の五倍くらい努力しているし、成績も優秀な方だと思う。
後5ページで読み終わる本がある。タイトルは『君と私の世界に永遠を』だ。恋愛小説ってやつだ。これを読んで、恋をしたいなとも思わないし、逆に本当にあるのかと思っている。なら読むなって話だが。
周りの子達は私の読んでいる本を見てぎょっとしている。きっと意外なんだろうなぁ。
別に誰が何をしようとあなたたちには関係ないのに。
あたかも自分が正しいと思わないでほしいなというのがこのクラスの人に伝えたいこと。そういうことを考えたまま一年はあっという間に過ぎ去ろうとしていた。
一年生は二月に交流遠足がある。次の学年に向けてみんなと仲良くしておこうという目的の遠足だ。班はくじで決める。
よかった、あの時みたいな思いをしなくて済む。
「番号順にくじをひきに来てください。」
私の一個前の番号の子が引く。いよいよ私の番。
変な人と同じになりませんように。なりませんように。
番号は6。
「っしゃ!俺6!」
川端涼介の声が聞こえる。なにがよっしゃなんだろうか。
「ええぇぇぇぇぇぇ。私2何だけど!誰か交換してええ!」
交換する義理もないので、しないけど。
「おーい。班ごとに席につけ。ここが一班であっちが6班な。順番にならんで、席付けー」
私はしずかに席に着く。メンバーは…。
「おっ、メンバーは、優香ちゃんと敬太とあと…、名前は…」
彼は順番に一人一人の名前を呼んでいく。でも、私の名前で呼ぶ声が止まる。おそらく私の名前だけ覚えていないのだろう。そんなに存在感、私なかったっけ?
「笠野美優、です」
彼はしかめっつらを笑顔にして、
「ああぁ!笠野さん!名前覚えていなくてごめん。これから仲良くしような!」
私はこくんと頷いて
「よろしく」
と静かの告げる。この遠足はどうなることやら。
班で計画を立てていく場所を決めるのだが、どうやら私に決める権利はないようだ。
まぁ、そりゃそうだよね。だって"はじめまして"みたいな感じだもんね。私がいく場所の地図をぼんやりと眺めていると、
「俺はこっちいきたい!」
「俺はこっちだからな!」
川端くんと西澤くん(敬太)が行く場所について争いはじめた。それを優香さんが
「ちょっとやめなよ。私とあんたたちは一個ずつ行きたい場所決めたでしょ?笠野さんがまだ決めてないよ」
意外だった。ただただ驚いた。周りをしっかり見ている彼女に。私は、今回の遠足もただいるだけで終わるんだろうなと思っていた。でも違った。
「どこに行きたいの?笠野さんは」
私は聞かれて、どうしようと思いつつも前から気になっていた場所にする。
「ここの水族館、行ってみたいかな。」
すると他の3人はぱあっと顔を輝かせ、
「いいね!水族館なんて考えもしなかった!」
「センスいいね!私も行きたい!」
「俺らが選んでいたのよりもいいところだ!楽しみ!」
みんなが口々に喜びを言ってくるもんだから、嬉しくて少しうつむいてしまった。自分の意見を否定せずに受け入れてくれた子はいつぶりだろうか。
ほんの少し、遠足が楽しみになる。
「じゃあ、ルートはこうでこれでいい?必要なお金は…」
優香さんが進めてくれる。私は横で頷いて話を聞いていると、
「笠野さん、ありがとうね!2人の争いはさ、昨日からやってるっぽくてさー。終わらなそうだったし…。笠野さんがいい意見を言ってくれたおかげ!ありがとう!」
私はキョトンとしてしまった。だって、ああいうふうに話を私に振ってきたのは優香さんだし、私がお礼を言われる部分なんて一つもない。
「ううん。私がお礼を言われるところなんて一つもないし、話を私に振ってくれたのは、優香さんでしょ?本当にありがとう。」
と率直な感想を述べると
「全然!てか、優香さんじゃなくて、優香か優香ちゃんって呼んでほしいな〜。これから遠足一緒に行く仲なんだし。」
彼女はとても優しかった。私を包み込むような優しさだった。
「ありがとう。優香ちゃん、よろしくね!」
と伝えると彼女はにっこり笑って
「こちらこそ!」
と答えてきた。そのやりとりを彼らがほっこりした目で見ていて
「こっちみんなや!その眼差しは何よ!」
と優香ちゃんがいう。私はそのやりとりをみてくすっと笑ってしまった。

あの日から二週間。遠足当日だ。
リュックにはお金とエコバック、遠足のしおり、飲み物など必要なものを入れる。
ブーッブーッ
スマホがなる。メッセージが来たようだ。見ると優香さ…ちゃんからだ。
[今日、遠足のバス一緒に乗ろ!]
と一言。誰かに恨まれないかなとか考えつつもまあいいかと納得し、
[ありがとう。一緒に乗ろう。]
と送る。
[やった!よろしくね!]
と来る。ほんの少しニコッとしてしまう。遠足とかの行事が楽しみになったのは、いつぶりだろう。集合時間に遅れないように家を出る。
「いってきます」
いってらっしゃいなんて帰ってこないのはわかっているのに毎朝言ってしまう。やめやめ、こんなことを考えたって自分の首を絞めるだけだから。

☁︎☔︎

バスに乗り込むとすでに優香ちゃんが私の分の席を取っておいてくれていた。
「美優ちゃん!席こっち!この辺、6班の席らしいからさー」
わ、美優呼びしてくれるんだとぱあっと顔が明るくなる感じがする。こんな私と仲良くしてくれるなんて、ありがたい。席に着くと後ろからどんっどすっと音がする。おそるおそる後ろをみると
「あ、わりぃ。蹴っちゃった」
と川端くんがいう。隣には西澤くんが座っている。2人ともニコニコ顔で何かを話している。きっと遠足が楽しみなんだろうな。私も優香ちゃんと出会えて遠足が楽しみになる。
「私、おやつ持ってきたんだ」
とおそるおそる言う。すると優香ちゃんは、ぱあっと顔を輝かせて
「このお菓子好き!食べていい?」
「もちろんだよ!」
と会話が続いていく。何年ぶりの友達だろう。現地に着くまであと1時間半、幸せな時間を過ごすことになるだろう。後ろでも何やら楽しそうな声が聞こえてくるし。

☁︎☔︎

現地に到着した。先生の声が聞こえてくる。
「おーい、並び次第、班活動開始だぞー。」
みんながすぐに整列する。6班の班長は川端くん。
「6班そろいました」
と先生に報告し、班活動が始まる。最初は優香ちゃんが行きたいと言っていたスイーツショップでスイーツ食べ放題だ。ショートケーキにチョコケーキ、モンブランにさつまいもケーキ。なんでも食べ放題。川端くんと西澤くんはこれのために遠足に来たというくらいの量を食べている。私と優香ちゃんはほどよい量を食べる。
「これ、おいしいぃ!」
「わかる。私、これ好き」
と他愛のない会話をかわす。普通に楽しいなと思う。
次に回るのは、水族館。悩んだ末に二つに絞ってじっくり回ることにしたのだ。いざ、入館すると綺麗な光景が広がっていた。
この水族館一の大水槽らしい。優雅に泳ぐ魚、大きな魚、美しい模様。まるで私にこっちにおいでと呼びかけているみたいだった。
私が見入っていると、
「気に入ったの?ここ来てよかったね。あとごめん。お手洗い行きたいから待っててほしいな。」
と優香ちゃんが言う。すると西澤くんが
「1人じゃ危ないだろ。一緒に行くよ」
と言う。さりげないサポートだ。あの2人、付き合いそうだなと思う。恋愛小説愛読者の勘ってやつかな。
「じゃあ、涼介と笠野さんはこの辺見ててくれる?」
と西澤くんが言う。
「わかった」
川端くんと私は大水槽の前のベンチで待つことになった。
改めて大水槽を見るとやっぱりここに入ってしまいたいと思う。決して自由ではないけれど、感情を持つことはないし、今の世界より楽だ。
「今、ここに入ってしまいたいって思った?」
ぼそっと聞こえてきた一言。川端くんだ。図星だった。
「う、うん」
としか言えなかった。無理に誤魔化す必要はないしなと。
「そっか。そんな感じの目で水槽を見ていたから」
妙におとなしい声。
「あ、川端くんって、その、そんなキャラだったっけ?」
彼は驚いたように目を見開いて
「元はね。みんなに合わせてるだけ。てか、俺には笠野さんに驚いてるんだけど?」
今度は私が目を見開いてしまった。
「え…」
「なんかそんな笑うキャラには見えなかったなって。何かきっかけがあったの?」
「あ…、その…」
答えられずに困っていると、彼はニコッと笑って
「いつか答えを導き出せるといいね。その時は、俺にも教えて」
「うん」
やんわりと微笑んでいる彼に私も微笑む。すると優香ちゃんたちが帰ってきた。
「美優ちゃん、ごめん!遅くなった!」
西澤くんも川端くんに近づく。そして
「うまく行った。遅くなってごめんな。」
と。何がうまく行ったのかな?と気になる。気になりすぎるから優香ちゃんに聞いてみる。
「…何がうまく行ったの?」
彼女はほんの少し顔を赤めて
「西澤くん…じゃなくて敬太…に告白されて、付き合うことになった…の」
私は驚きすぎて、顔を手で押さえてしまった。
あの…2人が付き合う⁉︎え!?
「おめでとう!」
心からのお礼が素直に出てきた。優香ちゃんはえへへと言う顔をしてニコッとはにかんだ。
水族館の場所はだいたいまわることができた。水槽トンネルに、手触り体験、アクセサリーづくり…。これから行く場所は私が一番行きたかったところ。
クラゲの水槽だ。
この水族館に来た目的は、クラゲといってもおかしくないくらい私はクラゲが好きだ。優雅で綺麗な色のクラゲを見ると表現できないくらい穏やかな気持ちになる。
歩いていると目の前にクラゲゾーンがあった。
ふぅっと息を吐いて入る。今までのストレスを全部捨てたい。ここに置いていきたい。
入って目を開けると、そこは美しい青に包まれていた。青いライトにゆっくりと泳ぐクラゲが照らされている。
一言で表すと幻想的だった。
異世界に来たのかと、現実から抜け出せたのかと思うくらい綺麗だった。
「う…わぁ…!」
優香ちゃんが驚きの声をあげる。
私はふっととあることを考える。
今日の私は、自由に感情を引き出せていることに気づく。冷たかった私が、無感情と言われていた私が。でも、きっと、優香ちゃんといるからだ。きっとクラスが分かれたら、元に戻ってしまうだろう。
クラゲの水槽にそっと手を当てる。来年も幸せな学校生活を送れますように。

☁︎☔︎

帰りのバスで、優香ちゃんは西澤くんはの隣の席に座ることにしたらしい。私の隣には川端くんが座る。川端くんが近くにいることを意識してしまって、少し、ドキドキする。
何を話したらいいかな。どうすればいいのかな。
「笠野さん、今日楽しかった?」
彼の澄んだ声が聞こえてくる。ドキッとして慌ててしまう。でも、しっかり答えなくては。
「た、楽しかったよ」
ちょっと冷たい物言いになってしまった。
「ねぇ、笠野さんってさ…」
「何?」
「俺のこと…嫌いなの?」
突然の問いかけにびっくりしてしまう。
え…俺のことが嫌い?嫌いなわけ…ない…じゃん。
「嫌い…じゃないよ」
彼は目を見開いて、俯いてしまう。
「俺に、冷たい感じがあったから。誰に対してもこうなの?」
彼の小さな疑問に答える…つもりだった。
「え…。誰に対しても…だと思う」
「優香ちゃんと俺とで態度が全然違うけど?」
私はごくんと息をのむ。仕方ないじゃないと言えばいいのかごめんねと言えばいいのかわからない。どうすればいいのか行き詰まっている私を見た川端くんが
「もういいや。ごめんね。またいつか話せる時でいいから聞かせて」
彼の心からの優しさに私は
「うん」
と頷くことしかできなかった。

☁︎☔︎

あの遠足からはや1ヶ月、春休みが訪れ、もう明日には二年生になる。
二年生にはクラス替えがある。
優香ちゃんと一緒になれればいいなと叶うはずもない願いを神様にお願いする。私の学年はクラスが6つあるので一緒になる確率は六分の一だが。
明日の学校の用意をする。
制服に、提出するプリント、かばん、受け取ったプリントを入れるファイル…。そこまで用意した時、スマホがブーブーと鳴る。
優香ちゃんからの電話だ。通話ボタンを押す。
「もっ、もしもし!」
『あ、美優ちゃん。今大丈夫?』
「もちろん!」
『〇〇公園来れる?今から。』
私はうーんとこの後の予定表を見る。ちょうど空いていたので、行くことにする。
「いけるよ!すぐ行く!」
『おけー!待ってるね!』
と電話を切ってすぐに着替える。そして家から飛び出す。急いで公園へ向かうと優香ちゃんがブランコに座って待っていた。
「優香ちゃんごめん!遅くなった!」
「全然平気!」
ニコッとはにかんでくれた。やっぱり優香ちゃんは優しい。
ふいに彼女の顔が暗くなる。
「私ね、敬太のことが好きなの。でも…、クラス替えで…別れるのが…、怖くって……」
彼女が私に初めて見せた、弱い部分。私は彼女の目をしっかりと見る。
「大丈夫。絶対に別れないから。絶対、絶対」
彼女は潤んだ瞳をこちらに向けて
「その自信、どこからくるの?」
と涙笑いを見せてくれた。
その後、しばらく公園で談笑した。
「じゃあ、また明日ね!」
「うん!じゃあね」
と簡単に言葉を交わしてその日は終わった。
一つ、願いができた。
極力、川端くんとは同じクラスになりたくない。
だって、彼は私にとって、とても眩しい存在だから。