ワンルーム、きみと小さな海をみる




アオさんのすみかは入り江からすぐのところにあった。

今から行く場所は"アパート"というらしい。




「お前たちでいう洞窟みたいなとこだよ」

「ふうん」

「ペット可物件だから人魚も大丈夫だと思うけど、あんた鳴いたりしないよな?」

「な、鳴かないよ!たまに…歌うかもしれないけど」

「ハミング程度にしてくれよ」



たとえ音痴だとしても、知らず知らずのうちに歌声を響かせてしまう。悲しい人魚の(さが)だ。

それよりも、




「重くない?」

「めちゃくちゃ重い。何キロあんだこれ」

「あの、わたしも一応おんなのこ……」



入り江からアパートまで引きずっていくわけにも
(鱗が削れるので)

おぶっていくわけにもいかず、
(ひっかける脚がないので)

アオさんはわたしを抱きかかえて運んでいた。




「お姫様抱っこだ」

「なんでそんな言葉は知ってんだよ」


「あなたたちの世界に物語があるように、わたしたちの世界にもまた物語があるんだよ。

たとえば知ってる?

これは一人の王子様に恋をしたお姫さまの──」