それからアオさんは慣れた手つきで処置を済ませた。
相変わらず身体はボロボロだったけれど。
少なくとも、心はようやくいつもの調子を取り戻したようだった。
「さてと、もうここにはいられないな」
バスタブの中からその姿を見つめていたわたしは「わたしも」と小さく声をかけた。
「……わたしも、連れて行ってくれる?」
「なに言ってんだ。当たり前だろ」
差し出された手を見つめる。
この先、きっと楽ばかりな道じゃない。
波のように困難が押し寄せて、転んでしまう日もあるだろう。
それでも、わたしはその手を迷わず取った。
「なあ」
「ん?」
「長い付き合いになりそうだから名前、教えろよ」
「◇=だよ」
「だから何語なわけ。お前の名前だけ聞き取れねーんだわ」
「好きに呼んでくれていいよ。ふふ、わたしはあなたの本名知っちゃったけど!」
「……クソ、あいつらか。俺だけ知られてるってのはなんか癪だな」
どんな名前でも、あなたであることに変わりはない。
わたしは水のある所じゃないと生きていけない。
それでもアオさんのそばでなら。
わたしはきっと、どこでだって息ができる。
fin.
