そっか、と胸の裡でつぶやく。 安堵の波が一瞬こころを平らにするけれど、そこに残るぽっかりと空いた空洞が、いまはもう戻らない大切なひとの痕跡をひそやかに伝えていた。 「ところで、あなたたちは自分の心配をしたほうがいいよ」 「あ?」 「いろいろ教えてくれてありがとう。今度はわたしが話したげるね」 人魚の話。 ううん、────セイレーンの伝説を。 海の怪物。 歌声を聴いたものは正気を失い、やがて死ぬ。 わたしは、わたしが知っているセイレーンの言い伝えをすべて聞かせてあげた。