「おい、見るな」
「じゃあどこを見ればいいの」
とうとうアオさんが黙ってしまった。
さすがにこれ以上いじめるのは可哀想なので、「あー今日の海は波が穏やかで泳ぎやすそうだなぁ」とわたしは窓のほうを向いた。
もし、アオさんがわたしと同じ人魚になれたなら。
きっとこの海の、さらに地平線の向こうまで一緒に泳いでいける。
一緒に、息ができるだろう。
……でも、うーん、なんか違うなぁ。
わたしがヒトになるのも、アオさんが人魚になるのもなにかが違う。
けれどそれを言葉にできるほどの理解も頭脳も持ち合わせていなくて、わたしはなんの気なしに浴室を振り返ってみた。
ラジオ、濡れた手を拭くタオル、いくつかの本、シャボン玉の容器、壁には完成したジグソーパズル。
洗面台に並んだふたつの歯ブラシに、リビングから引っ張ってきたテレビ。
────ああ、そっか。
もう一度、窓の外に目を向けたとき、
答えはすとんと胸に落ちてきた。
