ワンルーム、きみと小さな海をみる



「ああ、うん。治ったよ!」


わたしは両手と、それから尾びれも使ってバスタブの中でブイサインをする。




「ほら見て、おかげさまですっかり……」



人魚はヒトよりずっと傷の治りが早い。


何度も言うが、わたしの怪我はもうすっかり治っていた。

なので海に帰ろうと思ったら今すぐにでも帰れるし、どこまでだって泳いでいける。

いろんな人魚に聞いて回れば、いつかは故郷に帰ることだってできるだろう。


わたしはここで海に帰るべきだった。

これ以上迷惑をかけないように。


アオさんに本気で惚れこまないうちに。


でも、





「……やっぱり、まだ治ってないかも」



わたしはさっきまで雄々しく掲げていた尾びれをしゅんとおろした。

ついでに何枚かの鱗を隠れてむしって、証拠として手のひらに乗せて見せる。

もちろんこれでアオさんを騙せるわけもなく。




「人魚って痛覚ないわけ?それともお前がイカれてんの?どっち?」

「ある、めちゃくちゃある。いたい」

「バカだな、ほんと。めちゃくちゃバカだよお前」



いる?と涙目になりながら差し出した鱗をいらねえよと一蹴される。


それでも最終的にアオさんは、わたしの鱗をつまんで外の光にかざした。

海のなかだと青や緑のほうが圧倒的に綺麗だけど、地上で見るピンクの鱗はまるでステンドグラスのような神秘さがあった。