俺の同居人は普通じゃない


(宵side)

 あさ、かな。
 まだ、くらい。
 そとは、とてもしずか。

 なおやが、となりにいる。
 いき、してる。
 心臓が、なってる。
 
 だいじょうぶ。
 まだ、ここに、いる。
 
 とうや……、じゃない。
 いまは、なおや。

 なおや、いなくなると、怖い。
 怖いのは、だめ。
 ぼくが、そばにいないと。


 あ……。
 りん、と。
 りんのおと。
 ちがう、ここじゃない。

 ひかり。
 しろい、ぎん。
 おわる、よる。
 なくした。
 
 だれを?
 ぼくの、だいじな、だれか。

「――とうや」
 だめ。
 いま、よんじゃ、だめ。

 なおや。
 なおやは、ここ、いる。
 あったかい。


「んー、……朝か? 宵、おはよう」

 なおや、おきた。
 きす。
 
「もう、終わった? その毎朝の儀式」
「まだ」

 なおや、すぐむずかしいかおする。
 でも、にげない。
 うれしい。
 ちゃんと、ここいる。

 **
 
 なおや、いない、大学。
 
 まつ。
 まだ、いない。
 一人は、いやだ。

 怖い。
 いなくなるのは、だめ。

 なおやを、まもる。
 そのためなら、ぼく、消えてもいい。
 
 だから、そばにいる。
 それは、わかる。

 あの名前は、もう呼ばない。
 まえに呼んだとき、なおやが、怖がったから。
 もう、なくしたくない。

 はなしたくない。


 **
(尚弥side)
 
「……宵?」
 俺の声に、宵はびくっと肩を揺らした。

 あの日大学の帰り道、不意に足を止めた宵の横顔は、今にも泣き出しそうに見えた。
 怯えているのか、それとも何かに迷っているのか。
 
「どうした?」
 
 そう聞いても、宵は首を振るだけだった。
 
 さっきから、変だ。
 けれど、理由を聞くのは、たまらなく怖かった。