「フウカさんはどう思いますか?」
「…そうですね、何もしないよりは良いと思うけど…僕の料理っていうのは、ちょっと…」
苦笑うフウカに、春風は扇子をパタンと閉じ、側に居たフウカの肩を、ぽん、と叩いた。
「良い機会じゃないか。フウカ君、色々資格取ったんだから、使わないと勿体ないよ」
「ちょっと、春風さん、」
「いつか、自分の店を持ちたいって言ってたじゃない」
にこっと春風が笑う。こんな時ばかりは良い笑顔だ。フウカは困った様子で軽く頭を抱えたので、どうやら春風の発言は嘘ではないようだ。となれば、なずなの瞳が輝きを増した。
「じゃあ、予行演習にはぴったりじゃないですか!」
「…でも、いきなりというには…それに、テーブルやイスも揃えないといけないし」
「その辺は大丈夫だよ。倉庫に昔のテーブルが少しあるんだ」
「ありがとうございます…!バッチリ宣伝しますから!」
こんな時ばかり抜け目のない春風に、なずなが嬉々として乗っかれば、さすがにギンジもテーブルを叩いて声を上げた。
「おい、勝手に進めんなよ!」
「そうだそうだ!それに勝手に参加の申し込みなんかしやがって!」
ナツメも顔を上げて応戦する。だが、なずなも引く訳にいかなかった。
「だって、他に無いじゃないですか。こうでもしないと、ずっとここがお化け屋敷って呼ばれるんですよ?」
なずなが思わずハクへと視線を向ければ、ギンジとナツメもなずなの言いたい事が分かったのか、もどかしそうに視線を俯けた。
ジュースのコップを見つめているハクは、その視線には気づいていないだろうが、その顔はどこか浮かないようにも見える。
ハクを助けてくれた少年、純太の友人が言ってた事を気にしているのだろう。あやかしの世で差別に傷ついてきたのに、人の世でもハクに傷を負わせてしまった、それがなずなには悔しくて悲しくて、申し訳なかった。
ここの住人達は何も悪い事をしていないのに、彼らが意味もなく傷つけられるなんて嫌だ。
それには、このメゾン・ド・モナコの印象を変えなくては。
だったら、実際にこのアパートに来て、見て貰う方が良い。少し古いお屋敷が、実はとても魅力的な建物だと気づく筈だ。それに、ここの住人達の事も。ここには恐ろしいお化けなんかいない、人と変わらない、優しいあやかししかいないのだから。
勿論、あやかしという事は伏せてだが。でもそれを伝えられたら、自然と人とも交流を持てる筈だ。そうしたらきっと、ハクを見て気味が悪いなんて思わないだろう。



