メゾン・ド・モナコ



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なずなから話を聞いたミオは、仕事組の帰宅を待ち、皆をリビングに集めた。その表情からは、呆れや失望が入り交じっている。

「皆さん、もう少し気を引き締めて下さいよ」

そう憤慨するミオだが、当人達は呑気なものだった。

「ガキの言った事だろ?」
「火のないところに煙はたちません」
「でも、皆怖がってここには近づかないわよ」
「怖いものは皆、遠巻きに見るものです。マリンさん、覗かれたりしませんよね」
「あぁ、マリン君にはまじないが掛かってるし、それに念の為、盗撮盗聴関係は問題ないよ、ここは僕のアパートだからね。望遠で覗こうとしても、不思議と靄がかかったように見えるだろう。近くからは見えちゃうけど」
「…もしかして、それがお化けアパートと呼ばれる要因じゃないですか?」
「…え?」

ギンジ、マリン、春風(はるかぜ)をミオが順番に裁いていく。春風が固まった所で、なずなはひとまずミオの怒りを鎮めなくてはと、立ち上がった。

「ま、まぁ、根拠のない噂でしょうし、その内薄れていきますよ」
「…根拠ですか」

なずなのフォローは、早速、宙に浮いた。ミオはその先を溜め息にくるんで言葉にしなかったが、噂の根拠はしっかりと押さえられている。きっと、不思議現象を目にしたのは、あの少年だけじゃないだろう、信じてる人間がどれ程いるか分からないが。
押し黙る面々に、ミオは腰に手を当て、皆を見渡した。

「ちゃんと近所の方々とコミュニケーションを取らないから、こうなるんですよ。誰かに見られてると思えば危機意識も上がります。皆さんは、人間との距離を取りすぎているから、その危機感が逆にないんですよ」
「俺達は働いてる」
「仕事場だけ大丈夫ならいいってわけではありません、俺達は仕事だけしてるんじゃない、ここで生きてるんだから」
「……」
「…ミオ、みんなも分かってると思うよ」

再び押し黙る皆を見兼ねてか、ナオがそっと声を掛ける。ミオもナオも、皆がそうしたくても出来ない理由がある事は、恐らく分かっている。
ミオは再び深く息を吐くと、髪をくしゃと掻いた。

「うん、そうだね…、すみません、皆さんを責めたい訳ではないんです。でも、こういう事態があまり続くと、他のあやかしにも影響が出ます。不安や不満が皆さんに向かう事もある、俺はあなた達だって守りたいんですよ」

ミオの言葉に、皆は再び俯いた。ミオの思いも十分、分かるからだろう。
なずなには、あやかしの世界の事は分からない、だが、分からないからこそ、逆に声を上げる事が出来るのだと思う。

「ま、任せて下さい!」
「…なずなさん?」

再び立ち上がったなずなに、皆は顔を上げた。

「ここがお化け屋敷じゃないって証明してみせます!私、あんな風にハク君が傷つけられてるのに、何も出来ませんでした。皆さんには、いつも守って貰ってばかりです。だから私、今度こそ皆さんの力になれるよう頑張りますから!もう少し時間を下さい!お願いします!」

理由はどうあれ、自分を受け入れてくれた皆に、人であるなずなだから出来る事が何かある筈だ。守られてばかりでは駄目だ。もう不必要とされた自分ではない、誰かの為になりたい。