あるところに、生を司る妖精と死を司る妖精がいました。
生を司る妖精は生きるものに生きる喜びを、死を司る妖精は生きるものに遺された悲しみを与えていました。
生を司る妖精は、皆から称えられ、妖精も彼らに似た存在になりたいと歩み寄ります。
一方で死を司る妖精は、皆から嫌われ、外見は人の形を保っていながらも、色は正反対になっていきます。
人々はそんな妖精を見て、
「悪魔だ」
「そんな真っ白い髪して、特別になったつもりか?」
と、自分勝手な言葉をぶつけます。
生を司る妖精ばかりがもてはやされ、死を司る妖精は、人目に着かない街の端の方の水路で一人遊ぶ。
そんな日々が続いたある日、水路で遊んでいた妖精は、
「僕は人々の前から消えて、誰も死なない世界の方が今よりもずっといい」
と呟きました。そして、死を司る妖精はどこかへ消えてしまいます。
殺したはずの伯爵が生きていた、死にかけの甥っ子が目を開けた、列車にはねられたのに無傷だった...
人々は不死になったことに驚きながらも、突然やって来た幸せに喜び、活気溢れる日々が続きました。
ですがそんな日々に、黒い影が忍び寄ります。
最初は四、五人が咳き込み始め、やがて咳は街中に広がり、さらには王国全体にまで広がってしまいます。
這って動くのが精一杯なほどに弱り果てた人々は、生を司る妖精にすがり、
「この病を治してくれ」
と懇願しましたが、妖精ができるのは生きるものに活気を与えること、人々の体を蝕む病の元にも活気を与えてしまうのです。
人々を殺すことも、病の元を殺すこともできない妖精は、ただその惨状を見ることしかできませんでした。
妖精が膝を崩し、絶望している。と、その時。
「どうしたんだい」
冷たい手が、生を司る妖精の暖かい背中を撫でます。
生を司る妖精が顔を上げると、そこには死を司る妖精がいました。
人々は、これまで死を司る妖精に対してやってきたことを詫びながら、
「どうか私たちに最後の贅沢を...」
と言いました。死を司る妖精は、
「もう大丈夫。安心して、ぐっすり眠って」
と、言いながら手をかざすと、人々は、疲れはてた子供が眠るように死んでいきました。
――――――――――――――
―
生を司る妖精が、
「生きるのも、死ぬのも贅沢なことなんだね」
と言うと、死を司る妖精は小さく相槌を打ち、
「そうだね。僕と君がいて、はじめて生きものは成り立つんだ」
と言うと、二人は手を取り合い、一つの人生を司る妖精となって、いつまでも私たちを見守り続けるのでした。
生を司る妖精は生きるものに生きる喜びを、死を司る妖精は生きるものに遺された悲しみを与えていました。
生を司る妖精は、皆から称えられ、妖精も彼らに似た存在になりたいと歩み寄ります。
一方で死を司る妖精は、皆から嫌われ、外見は人の形を保っていながらも、色は正反対になっていきます。
人々はそんな妖精を見て、
「悪魔だ」
「そんな真っ白い髪して、特別になったつもりか?」
と、自分勝手な言葉をぶつけます。
生を司る妖精ばかりがもてはやされ、死を司る妖精は、人目に着かない街の端の方の水路で一人遊ぶ。
そんな日々が続いたある日、水路で遊んでいた妖精は、
「僕は人々の前から消えて、誰も死なない世界の方が今よりもずっといい」
と呟きました。そして、死を司る妖精はどこかへ消えてしまいます。
殺したはずの伯爵が生きていた、死にかけの甥っ子が目を開けた、列車にはねられたのに無傷だった...
人々は不死になったことに驚きながらも、突然やって来た幸せに喜び、活気溢れる日々が続きました。
ですがそんな日々に、黒い影が忍び寄ります。
最初は四、五人が咳き込み始め、やがて咳は街中に広がり、さらには王国全体にまで広がってしまいます。
這って動くのが精一杯なほどに弱り果てた人々は、生を司る妖精にすがり、
「この病を治してくれ」
と懇願しましたが、妖精ができるのは生きるものに活気を与えること、人々の体を蝕む病の元にも活気を与えてしまうのです。
人々を殺すことも、病の元を殺すこともできない妖精は、ただその惨状を見ることしかできませんでした。
妖精が膝を崩し、絶望している。と、その時。
「どうしたんだい」
冷たい手が、生を司る妖精の暖かい背中を撫でます。
生を司る妖精が顔を上げると、そこには死を司る妖精がいました。
人々は、これまで死を司る妖精に対してやってきたことを詫びながら、
「どうか私たちに最後の贅沢を...」
と言いました。死を司る妖精は、
「もう大丈夫。安心して、ぐっすり眠って」
と、言いながら手をかざすと、人々は、疲れはてた子供が眠るように死んでいきました。
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生を司る妖精が、
「生きるのも、死ぬのも贅沢なことなんだね」
と言うと、死を司る妖精は小さく相槌を打ち、
「そうだね。僕と君がいて、はじめて生きものは成り立つんだ」
と言うと、二人は手を取り合い、一つの人生を司る妖精となって、いつまでも私たちを見守り続けるのでした。


