『おばさんの手料理食べた? 久々に美味しかっただろ?』
結局、夕飯も食べられないでいた。
コンビニで買ってきた菓子パンを食べているが、電話越しの晴矢には何も言わないでいる。
「嫌、流石に疲れたらしくて宅配にした」
『そっか、今朝の飛行機だもんな』
「うん……」
晴矢には両親が俺たちの関係を知ったことを伝えないと。
明後日、晴矢の家を訪ねた二人がおじさんに何を言うかわからないから。
それでも俺たちは同じ気持ちでいられるか確認したかった。
「……晴矢、実は……」
『あ、ちょっと待って。父さんが呼んでいる、このまま待っていて』
晴矢が部屋を出て行く音がする。
電話ではなく直接伝えたい……これを聞いた晴矢の表情が見たい。
また本当の気持ちを隠すかもしれないから。
『ごめん。父さんが大層なお土産をありがとうって伝えてってさ。ドライフルーツ好きみたいだからすごく喜んでいた。あの調子だとあっという間に無くなりそう』
晴矢の明るく楽しそうな声を聞き、伝える勇気が萎える。
『で、何か言いかけただろ? 何?』
「嫌、明日大学で話すよ。2限一緒だったよな?」
『そうだね。了解―。一人で寝るのが寂しいって泣くなよな』
「それはこっちのセリフ。大きな抱き枕が無いって泣くのはお前の方だろ」
『はい、はい。おやすみ』
「……おやすみ、晴矢」
明日、晴矢の顔を見ながら伝える。
これからの二人のことも。
🔸🔸🔸
大学は中学、高校の校舎がある駅と同じだが、駅からはバスではなく徒歩で通う。
中学、高校の時は駅の周りには何もなかったが、大学に入った頃にスタバなど幾つかのチェーン店が出来た。
それでもまだまだのどかな風景が残る。
駅から大学に向かって歩いていると、後ろから背中を叩かれた。
「なんか、前を歩いている良樹が新鮮」
晴矢だった。
息が上がっている。
俺を見つけて走ってきたようだ。
「そんなに俺を見つけて嬉しかったのか? 走って来ただろ」
「別に……」
「ごまかすなよ、お前のことは何でもわかっているんだから」
「嫌でもこのデカさは目立つからさ、ついつい」
晴矢の言い方が可愛くて笑顔になってしまう。
中学の時からずっとそうだ。
晴矢は自分にしか見せない笑顔と言うが、意識していなかったが他の人へ向ける笑顔とは確かに違うように思う。
晴矢を見ると自然とこぼれてしまう、自分でも怖くなる時がある。
「2限終わったらさ、ちょっと外でないか?」
「うん、いいけど」
「行ってみたいカフェがあってさ」
「スタバじゃなく?」
「そう。こんなところにあるのかっていう穴場」
「いいね」
俺はなるべく人がいない場所で晴矢に話したかった。
少なくとも、大学の人間がいない場所で。
🔸🔸🔸
「あれ、先野もこの講義取っていたっけ?」
2限の教室に座っていると庄野が晴矢に声を掛けてきた。
隣には伊東さんもいる。
「うん、俺も良樹も取っているけど。確かに庄野のこと見たことなかったかも」
「まあ、俺今日が初めてなんだけど」
「なんだよ、それ!」
伊東さんとは以前ほど話す機会が無くなっていた。
同じ講義が多いが、伊東さんが庄野と付き合いだしてから距離を取られるようになった。
俺自身は特に気にしてはいないが、それほど意識する必要があるのかが疑問だった。
「るり子がずっと出ているからさ、俺は楽勝なわけ」
「相変わらずだね……」
「相変わらずといえばお前たちも仲良いな。っていうかラブラブっていうべきか」
「ちょっ、圭!」
伊東さんが庄野の腕を叩きツッコむ。
「ラブラブで羨ましいか? 俺から見れば二人も相当ラブラブに見えるけど。っていうかデキる女性に喰わせてもらっているヒモみたいに見えるけどな」
「良樹!」
今度は晴矢が俺にツッコむ。
俺は庄野に対して嫌味を言ったつもりだが、なんだか楽しくなって笑ってしまう。
そんな俺を見て伊東さんも笑いだした。
庄野と晴矢は固まっている。
二人の笑いのツボが同じなのか、なかなか止まらない。
伊東さんは笑い過ぎて涙が出ている。
「あー可笑し過ぎる。ちょっと化粧落ちちゃうわよ。手島くんのそういうセンス大好き。ホントよ、ヒモなの。全然自分で何とかしようって気概がないのよ、コイツ」
「るり子……そこまで言わなくても」
「この際、反省しなさいよ。いつまでも私が言う事聞くと思わないで。それに、二人に謝って。私たちは付き合っているからいいけど、二人に対して色眼鏡で見るのは失礼でしょ、ホラ、謝る!」
「……ごめん、言い過ぎた」
伊東さんの切れ味鋭いツッコみと、口先だけで弱腰の庄野との対比が面白い。
「いいよ、気にしないから。っていうか伊東さん強いね。格好良い。庄野がこんなに弱気な奴だって知らなかったから新鮮」
「ホント? ありがと。圭は根っから悪い奴じゃないけど、弱気なくせにイキっているからヘンなことしたら容赦なくツッコんで。先野くんも手島くんも私にとっては大学で出来た貴重な友達だから、この先も仲良くしたいし」
「るり子、もっと言い方あるだろ……」
「先野くんに散々迷惑かけてきたでしょ?」
完璧に伊東さんの尻に敷かれている庄野が少し気の毒にも見えるが、意外とこの関係性が二人の性格には合っているのかもしれない。
「俺たちにとっても新しく出来た友達は大事にしたいから、これからは遠慮なくツッコませてもらうね」
晴矢が楽しそうに返す。
意外な展開が新しい友達との関係を密にしてくれるようだ。
素直に接すれば関係性が好転することもあるのかな……
俺はお母さんたちのことを考えていた。
🔸🔸🔸
密かに見つけたカフェに入る。
お客さんは近所に住んでいる主婦やお年寄りで、若者は俺たちだけだった。
店主は男性でキーちゃんぐらいの年齢に見える。
注文し、自分でピックアップして好きな席に座る。
店の中は静かでクラシックが流れていた。
「なんかレトロな感じでいいね。すごく落ち着く」
「うん。俺も晴矢も好きなタイプのカフェだと思って」
「庄野たち面白かったな。なんかそんなに悪い奴じゃないのかもって思った」
「悪い奴じゃないけど、人の事を好き勝手に扱うところはダメだろ」
「でも、伊東さんはツッコミしつつも好きなんだよな、不思議」
「確かに……ダメな男を好きっていう女性は多いらしいけどな」
「ふーん」
「……お母さんたちに俺たちの事がバレた」
「え……」
気をよくしているように見える晴矢を前に自然と口から洩れていた。
「ベッドの上に置いてあったあのアルバムを見たみたいで、いつからかって……」
「……だ、大丈夫だったの?」
「大丈夫じゃない。お母さんは泣きわめいていた」
「え、じゃあ夕べ電話した時は?」
「ひと悶着終わった後」
「どうして! その時俺に言わないんだよ!」
晴矢の声が大きくなり、店主も周りに居た人たちも一斉に俺たちに目を向ける。
「晴矢……声落として」
「だ、だって……あの時言ってくれたら俺が家に行ったのに」
「来てもらっても対処のしようがなかったよ」
「でも、良樹が一人で悩まずに済んだし、寂しい思いをしなかっただろ?」
「晴矢……」
「俺に気持ちを隠すなって言うくせに、良樹だって我慢して隠していること知っているぞ。俺に知られるのは嫌なのか? 良樹のプライドが許せない? 俺って未だに頼りにならない?」
晴矢は例えどんな状況に陥ったとしても、俺のことを最優先に考えてくれる。
「……お前に心配をかけたくない。確かにそれって俺のちっぽけなプライドかもな」
「良樹は素直じゃない!」
「ごめん」
俺は晴矢の言葉に素直に謝った。
晴矢を守るという意識が強すぎて、晴矢に弱い面を見せられないようになっていた。
一番信頼している相手なのに。
「おばさんは大丈夫? おじさんは?」
「今朝は二人には会わないまま家を出た。お父さんにはわかったって言われた」
「わかったか……やっぱり反対だよね、俺たちが付き合うことには」
「……たぶん」
「良樹はどうするの? どうしたい?」
「俺はお父さんたちには晴矢と別れるつもりはないって話した。この先もずっと一緒に居るって」
「ホントに?」
「うん。そうしたらお母さんが……」
「そっか」
晴矢は視線を落とし、湯気が出ているコーヒーカップを両手で包む。
俺は思わずその手の上に自分の手を合わす。
「晴矢も同じ気持ちでいてくれるか? お父さんたちが何を言ったとしても俺と居られる?」
「……うん。何があっても離れないって言ったよね。二人のことを認めてもらえなくても、俺のことを嫌ってもいいから、良樹がお父さんたちに嫌われないようになんとかする」
「晴矢、そんなこと無……」
「絶対に自慢の息子であることは変わらないって証明させてみせるから。だから大丈夫だよ」
晴矢が自信をもって口にする言葉に俺は感動する。
いつからこんなに強くなったのだろう、俺は甘えていいのだろうか。
「お前、強いな……」
「そう、俺は良樹と一緒に過ごす中で強くなった! だから良樹も俺を頼ってよ」
「うん」
俺はお母さんの様子やお父さんがおじさんに対して発した言葉も全て詳細に晴矢に伝えた。
「父さんのことは心配しなくても大丈夫だよ。理不尽なことに対しての免疫はかなり強いらしいから」
「そうなのか?」
「うん。百戦錬磨だって、キーちゃんが言っていた。あれだけタフじゃなかったら今の地位は築けてないって」
「でも、おじさんを悪者にするのは違うだろ」
「例え悪者になっても俺たちのことは守ってくれるよ。この二年間で俺は父さんをかなり信頼するようになった」
「おじさんは常に正しいことを示してくれるよな。俺はそういうところを尊敬している」
「良樹の言葉聞いたら父さん大喜びするよ」
「そうかな……今度きちんと伝えようかな」
「俺は自分の気持ちに正直に動いて、正直に伝える良樹が好きだよ」
俺が一番言われて嬉しい言葉を投げてくれるのは晴矢だ。
晴矢を悲しませるようなことはしない。
例え、お父さんたちに理解されなくても。
結局、夕飯も食べられないでいた。
コンビニで買ってきた菓子パンを食べているが、電話越しの晴矢には何も言わないでいる。
「嫌、流石に疲れたらしくて宅配にした」
『そっか、今朝の飛行機だもんな』
「うん……」
晴矢には両親が俺たちの関係を知ったことを伝えないと。
明後日、晴矢の家を訪ねた二人がおじさんに何を言うかわからないから。
それでも俺たちは同じ気持ちでいられるか確認したかった。
「……晴矢、実は……」
『あ、ちょっと待って。父さんが呼んでいる、このまま待っていて』
晴矢が部屋を出て行く音がする。
電話ではなく直接伝えたい……これを聞いた晴矢の表情が見たい。
また本当の気持ちを隠すかもしれないから。
『ごめん。父さんが大層なお土産をありがとうって伝えてってさ。ドライフルーツ好きみたいだからすごく喜んでいた。あの調子だとあっという間に無くなりそう』
晴矢の明るく楽しそうな声を聞き、伝える勇気が萎える。
『で、何か言いかけただろ? 何?』
「嫌、明日大学で話すよ。2限一緒だったよな?」
『そうだね。了解―。一人で寝るのが寂しいって泣くなよな』
「それはこっちのセリフ。大きな抱き枕が無いって泣くのはお前の方だろ」
『はい、はい。おやすみ』
「……おやすみ、晴矢」
明日、晴矢の顔を見ながら伝える。
これからの二人のことも。
🔸🔸🔸
大学は中学、高校の校舎がある駅と同じだが、駅からはバスではなく徒歩で通う。
中学、高校の時は駅の周りには何もなかったが、大学に入った頃にスタバなど幾つかのチェーン店が出来た。
それでもまだまだのどかな風景が残る。
駅から大学に向かって歩いていると、後ろから背中を叩かれた。
「なんか、前を歩いている良樹が新鮮」
晴矢だった。
息が上がっている。
俺を見つけて走ってきたようだ。
「そんなに俺を見つけて嬉しかったのか? 走って来ただろ」
「別に……」
「ごまかすなよ、お前のことは何でもわかっているんだから」
「嫌でもこのデカさは目立つからさ、ついつい」
晴矢の言い方が可愛くて笑顔になってしまう。
中学の時からずっとそうだ。
晴矢は自分にしか見せない笑顔と言うが、意識していなかったが他の人へ向ける笑顔とは確かに違うように思う。
晴矢を見ると自然とこぼれてしまう、自分でも怖くなる時がある。
「2限終わったらさ、ちょっと外でないか?」
「うん、いいけど」
「行ってみたいカフェがあってさ」
「スタバじゃなく?」
「そう。こんなところにあるのかっていう穴場」
「いいね」
俺はなるべく人がいない場所で晴矢に話したかった。
少なくとも、大学の人間がいない場所で。
🔸🔸🔸
「あれ、先野もこの講義取っていたっけ?」
2限の教室に座っていると庄野が晴矢に声を掛けてきた。
隣には伊東さんもいる。
「うん、俺も良樹も取っているけど。確かに庄野のこと見たことなかったかも」
「まあ、俺今日が初めてなんだけど」
「なんだよ、それ!」
伊東さんとは以前ほど話す機会が無くなっていた。
同じ講義が多いが、伊東さんが庄野と付き合いだしてから距離を取られるようになった。
俺自身は特に気にしてはいないが、それほど意識する必要があるのかが疑問だった。
「るり子がずっと出ているからさ、俺は楽勝なわけ」
「相変わらずだね……」
「相変わらずといえばお前たちも仲良いな。っていうかラブラブっていうべきか」
「ちょっ、圭!」
伊東さんが庄野の腕を叩きツッコむ。
「ラブラブで羨ましいか? 俺から見れば二人も相当ラブラブに見えるけど。っていうかデキる女性に喰わせてもらっているヒモみたいに見えるけどな」
「良樹!」
今度は晴矢が俺にツッコむ。
俺は庄野に対して嫌味を言ったつもりだが、なんだか楽しくなって笑ってしまう。
そんな俺を見て伊東さんも笑いだした。
庄野と晴矢は固まっている。
二人の笑いのツボが同じなのか、なかなか止まらない。
伊東さんは笑い過ぎて涙が出ている。
「あー可笑し過ぎる。ちょっと化粧落ちちゃうわよ。手島くんのそういうセンス大好き。ホントよ、ヒモなの。全然自分で何とかしようって気概がないのよ、コイツ」
「るり子……そこまで言わなくても」
「この際、反省しなさいよ。いつまでも私が言う事聞くと思わないで。それに、二人に謝って。私たちは付き合っているからいいけど、二人に対して色眼鏡で見るのは失礼でしょ、ホラ、謝る!」
「……ごめん、言い過ぎた」
伊東さんの切れ味鋭いツッコみと、口先だけで弱腰の庄野との対比が面白い。
「いいよ、気にしないから。っていうか伊東さん強いね。格好良い。庄野がこんなに弱気な奴だって知らなかったから新鮮」
「ホント? ありがと。圭は根っから悪い奴じゃないけど、弱気なくせにイキっているからヘンなことしたら容赦なくツッコんで。先野くんも手島くんも私にとっては大学で出来た貴重な友達だから、この先も仲良くしたいし」
「るり子、もっと言い方あるだろ……」
「先野くんに散々迷惑かけてきたでしょ?」
完璧に伊東さんの尻に敷かれている庄野が少し気の毒にも見えるが、意外とこの関係性が二人の性格には合っているのかもしれない。
「俺たちにとっても新しく出来た友達は大事にしたいから、これからは遠慮なくツッコませてもらうね」
晴矢が楽しそうに返す。
意外な展開が新しい友達との関係を密にしてくれるようだ。
素直に接すれば関係性が好転することもあるのかな……
俺はお母さんたちのことを考えていた。
🔸🔸🔸
密かに見つけたカフェに入る。
お客さんは近所に住んでいる主婦やお年寄りで、若者は俺たちだけだった。
店主は男性でキーちゃんぐらいの年齢に見える。
注文し、自分でピックアップして好きな席に座る。
店の中は静かでクラシックが流れていた。
「なんかレトロな感じでいいね。すごく落ち着く」
「うん。俺も晴矢も好きなタイプのカフェだと思って」
「庄野たち面白かったな。なんかそんなに悪い奴じゃないのかもって思った」
「悪い奴じゃないけど、人の事を好き勝手に扱うところはダメだろ」
「でも、伊東さんはツッコミしつつも好きなんだよな、不思議」
「確かに……ダメな男を好きっていう女性は多いらしいけどな」
「ふーん」
「……お母さんたちに俺たちの事がバレた」
「え……」
気をよくしているように見える晴矢を前に自然と口から洩れていた。
「ベッドの上に置いてあったあのアルバムを見たみたいで、いつからかって……」
「……だ、大丈夫だったの?」
「大丈夫じゃない。お母さんは泣きわめいていた」
「え、じゃあ夕べ電話した時は?」
「ひと悶着終わった後」
「どうして! その時俺に言わないんだよ!」
晴矢の声が大きくなり、店主も周りに居た人たちも一斉に俺たちに目を向ける。
「晴矢……声落として」
「だ、だって……あの時言ってくれたら俺が家に行ったのに」
「来てもらっても対処のしようがなかったよ」
「でも、良樹が一人で悩まずに済んだし、寂しい思いをしなかっただろ?」
「晴矢……」
「俺に気持ちを隠すなって言うくせに、良樹だって我慢して隠していること知っているぞ。俺に知られるのは嫌なのか? 良樹のプライドが許せない? 俺って未だに頼りにならない?」
晴矢は例えどんな状況に陥ったとしても、俺のことを最優先に考えてくれる。
「……お前に心配をかけたくない。確かにそれって俺のちっぽけなプライドかもな」
「良樹は素直じゃない!」
「ごめん」
俺は晴矢の言葉に素直に謝った。
晴矢を守るという意識が強すぎて、晴矢に弱い面を見せられないようになっていた。
一番信頼している相手なのに。
「おばさんは大丈夫? おじさんは?」
「今朝は二人には会わないまま家を出た。お父さんにはわかったって言われた」
「わかったか……やっぱり反対だよね、俺たちが付き合うことには」
「……たぶん」
「良樹はどうするの? どうしたい?」
「俺はお父さんたちには晴矢と別れるつもりはないって話した。この先もずっと一緒に居るって」
「ホントに?」
「うん。そうしたらお母さんが……」
「そっか」
晴矢は視線を落とし、湯気が出ているコーヒーカップを両手で包む。
俺は思わずその手の上に自分の手を合わす。
「晴矢も同じ気持ちでいてくれるか? お父さんたちが何を言ったとしても俺と居られる?」
「……うん。何があっても離れないって言ったよね。二人のことを認めてもらえなくても、俺のことを嫌ってもいいから、良樹がお父さんたちに嫌われないようになんとかする」
「晴矢、そんなこと無……」
「絶対に自慢の息子であることは変わらないって証明させてみせるから。だから大丈夫だよ」
晴矢が自信をもって口にする言葉に俺は感動する。
いつからこんなに強くなったのだろう、俺は甘えていいのだろうか。
「お前、強いな……」
「そう、俺は良樹と一緒に過ごす中で強くなった! だから良樹も俺を頼ってよ」
「うん」
俺はお母さんの様子やお父さんがおじさんに対して発した言葉も全て詳細に晴矢に伝えた。
「父さんのことは心配しなくても大丈夫だよ。理不尽なことに対しての免疫はかなり強いらしいから」
「そうなのか?」
「うん。百戦錬磨だって、キーちゃんが言っていた。あれだけタフじゃなかったら今の地位は築けてないって」
「でも、おじさんを悪者にするのは違うだろ」
「例え悪者になっても俺たちのことは守ってくれるよ。この二年間で俺は父さんをかなり信頼するようになった」
「おじさんは常に正しいことを示してくれるよな。俺はそういうところを尊敬している」
「良樹の言葉聞いたら父さん大喜びするよ」
「そうかな……今度きちんと伝えようかな」
「俺は自分の気持ちに正直に動いて、正直に伝える良樹が好きだよ」
俺が一番言われて嬉しい言葉を投げてくれるのは晴矢だ。
晴矢を悲しませるようなことはしない。
例え、お父さんたちに理解されなくても。



